10時に起きた。

日比谷公園の芝生の上を走る、自動草刈りロボット。野生化したルンバみたい。そういえば、iRobot社が経営破綻して破産していた。もううちのデンパ(ルンバにつけた名前)は、壊れたらメンテナンスできないのか?
今日はお友達のユさんと日比谷に来て映画を見た。『サムシング・エクストラ! 優しい泥棒と愉快な逃避行』を見た。フランス映画で、強盗をした主人公シルヴァン(偽名)と父親オルピ(偽名)が、警察の追手から逃れるために、たまたま出くわした障害者介助施設の遠征旅行の一団のバスに乗り込んで、自分たちも障害者とその介助者のふりをしながらその障害者グループのなかに紛れるという話。面白かった。
下数段落ネタバレ。
理想の子供像を子に押しつける親と、それに上手く自分を合わせられず抑圧に苦しむ子という、アダルトチルドレンがテーマの脚本だった。その問題と健常者-障害者のスペクトラムを照らし合わせて相互に客観視する感じ。シルヴァンはおそらく父オルピの仕込みで泥棒業の手伝いをやっていたのだが、いつも手際があまりよくなく、オルピからは叱られてばかりいた。そんな彼が、障害者グループのメンバーたちと関わっていくにつれて、彼なりに自分らしくふるまえる本当の居場所というものを見つけ、最終的に父もとい泥棒業と訣別し、自首する。
介助者のふりをして、シルヴァンと同様に遠征に同行した泥棒父オルピのほうの展開が、僕はとても気になった。始めは障害者たちを「バカども」と呼び、介助仕事などやる気がさらさらなかった彼だが、障害者メンバーの一人、内気だがサッカーのことが大好きな青年バティストに、異様に懐かれる。オルピは介助者の主要スタッフよりも、バティストのサッカーへの熱情に真剣に向き合ってくれたから、バティストはそんな彼のほうに心を開いたのだ。オルピは彼の面倒を見ていくうちに、彼に対して特別な愛情を注ぐようになる。
オルピはたぶん、実の息子のシルヴァンに本当はサッカーを教えたかったけれど、それが叶わなかったのだと思う。シルヴァンはあまり、父の期待に応えられる息子ではなかったのだろう(あるいは、泥棒業のためにサッカー的なことをやる幼年期を過ごせなかったか)(シルヴァンは境界知能として描かれているようにも見えた)。
いずれにせよ、そのオルピが、障害者施設で「自分が本当にやりたかった父親としてのふるまい」を発揮できる「理想の息子のような別の子供」に出会い、実の息子以上に溌溂な、疑似的な父子関係を築いていくというようすが、グロテスクでもあり美しくもあった。まあそのサブプロットも、親と子の問題に関して親側に自己反省的な視座を与える、という形で映画のメインテーマに収束していく役割ではあった。けれど「息子とは別の子供を、息子のように愛し育てる(その一方で、実の息子は自分の思うように育たない)」という構図は、それ単品ですごい味がするなと思った。

映画面白かった。その後、パンケーキが食いたいねって話になって、銀座に移動した。

パンケーキ屋の天井のファンが、一つだけ回転の向きが逆だった。それを記録しておくために撮ったのだが、静止画じゃ何も伝わらないね。5つあるファンのうちの真ん中の一つだけ、逆だった。なんか以前もファンが一つだけ挙動が違うことあったよね。
僕はユさんに「天井のファンがあれ、あれだけ逆回転してるんですけど、なんでですかね」と言った。するとユさんは「逆につけちゃったんじゃない? ん逆? 逆向きにつけるとかないか」と言った。「プロペラは逆にはなってないですね。傾きかたが他のと同じなんで」「じゃあ空気の動きが逆なんだ。あれじゃない? あそこだけ逆回転で空気を上昇させて、他は下降させることで、結果いい感じに空気がこう、攪拌されるみたいな」「じゃあ手違いじゃなくて、わざとやってるってことですか? で、回転方向はファンの方で切り替えられるの?」「そうそう」軽く調べたら、どうやら空気を均等に攪拌するために一部のファンだけ逆回転させるというのは、よくあることらしかった。ユさんの推理がまさに合っていたのだ。ユさんは「それでこの前トロヤさんが見た一つだけ回転速度が速かったファンってのも、そこの空気の下降速度だけ相対的に大きくして、部屋全体としては均等に空気の攪拌させる狙いがあったんじゃない?」「そうかも! めっちゃありそう」

パンケーキめっちゃおいしかった
上野に移動して上野公園を歩いて喋ったりして、ラーメン食って帰った。
ラーメンを食べているとき、ユさんは相続税と固定資産税の話、水回りはリフォームにかかる費用が比較的安いわりに、設備の劣化具合が家の売却時の査定額に響きやすいから、風呂場はリフォームし得だよみたいな話をしていた。それらが僕は全然理解できなかった。
あとユさんは基礎代謝のカロリー消費に対して運動によって消費されるカロリーは全然足しになっていないみたいな話もして、おにぎり一個のカロリーは何kmのウォーキングに相当するから……みたいな、kcal単位の足し算をぼそぼそとし始めた。僕はそれもよくわかんなかった。その話を聞いているときは、ユさんの背後の壁にあった絵に描かれていた「Cat’s length tells us how hot it is.」という英文について考えていた。熱いときは猫の身体は伸びて、寒いと丸くなるということか。
「投げナイフって実際にあったんですかね? だって投擲武器って消耗品ですよね。そのわりには一個一個製鉄から鍛錬までやらなきゃいけなくて、武器としてコスパ悪すぎじゃないですか?」とユさんに話したら、「まあ基本暗殺用だから、大量に消費するつもりでは作ってないだろうね。ちなみに手裏剣は刃の数が少ないほど命中したしたときのダメージが大きくて、確実に殺すために刃一本の手裏剣とかもあるんだよ。忍たま乱太郎でやってた」「そうなんですか。手裏剣といえば四方向に刃が出てるイメージが強いですけど。あれは命中率重視ってことですか。でもたしかに、刃の数が増えるとそれだけ刃先の鋭利さは損なわれるから、威力は下がりそうですね」「そう。だからどうするかっていうと、刃に毒を塗るんですよ」ユさんがなんか武器について詳しくて感心した。ちなみにこの投げナイフの疑問は、昨日思いついてGeminiに尋ねていた。僕はユさんに「そういえばGeminiが教えてくれたんですけど、アフリカ? に最強の投げナイフと呼ばれる武器があるんですよ」と言った。するとユさんは「あ、クピンガ?」と言った。

クピンガも知っていたとは。僕は昨日知った。ネットじゃ有名なのかな。
その後も、ユさんは地名に関する無数のトリビアを言った。「新宿は本当に『新しい宿』って意味で、江戸時代に甲州街道沿いに建てられたんだよ」「三軒茶屋も本当に三軒のお茶屋さんがあったの。街道沿いに。今も一軒残ってるんだよ」「北海道って神社の名前をみたらその周辺住民のルーツがわかるんだよ。北海道に移住した元本州人が、引っ越しのときに地元の信仰をそれぞれ持ち込んだから」「鶯谷は駅としてはあるけど『鶯谷』っていう地名は無いんだよ」「大宮の『宮』は氷川神社のことだよ」など。「なんでそんなに詳しいんですか?」と訊いたら「アド街見てたから。全部山田五郎が言ってた」とのことだった。どうりで。
僕も自分が知っている地名の由来を言った。「調布は、奈良時代に蘇・庸・調って税制があったじゃないですか。調布はそこで、布を活発に作って『調』として国に納めていたから調布と言うらしいですよ」「へー知らなかった。隣の布田とかもそこから来てそうですね」
ユさんは知識があるだけでなく、洞察も筋が良かった。「駒澤とか駒込とか駒場みたいに『駒』ってつく地名多いよな。あれかな、馬かな? 昔って道しかなかっただっただろうから、馬を留める場所が各地にあったのかもね」など。それに関連して僕が「狛江の『狛』は馬の『駒』とは違うんですかね?」と訊いたりした。調べたら、「狛」はもとは「高麗(こま)」であるらしく、(かつて高句麗だった)朝鮮からの渡来人がその地を開拓したから「狛江」というらしかった(「江」はおそらく多摩川)。たしかに東方Projectにも「高麗野(こまの)あうん」という狛犬のキャラクターがいる。「狛=高麗」ということなのか。
その後も、ユさんのトリビアはとどまることを知らなかった。「なんか動物の名前って、もともとは伝説上の生き物の名称を充てた例が多いんすよ」「あー麒麟とか?」「キリンはそうだし、バクとかも。実はワニももともと日本の神話に出てきた怪物の名前で、もとはむしろサメっぽいんすよ」「へー知らなかったです」「あとシャチも。鯱(しゃちほこ)に似てるからシャチって名前になったんです。鯱自体はシャチじゃないでしょ?」「確かに。なんかあれか、キリンもバクもそうですけど、明らかに日本にはいない外来の生物なのに和名っぽい名前がついているのは、そういう経路で命名されてることが多そうですね。他にはなんかいるかな。アシカとかはどう? アザラシは?」「調べてみるね」
また、「SOSはなぜSOSというのか」で議論をした。ユさんは「モールス信号でわかりやすい符号になってるんじゃない?」とか「点対称だから上空のどこの角度から見ても判別しやすいからじゃない?」など、SOSというそれぞれの文字自体には意味がないという意見を上げた。対して僕は、SOSはきっと何かの略称で意味があるのだろうと謎に確信していた。それで「[救助にあたるSから始まる英単語] Order Sign」か、あるいは「Signal of [緊急事態にあたるSから始まる英単語]」とかかな~と予想して、しばらくそれっぽい単語を探していたのだが、結局分からなかった。
諦めて調べた。SOSは「・・・ーーー・・・」で極めてシンプルなモールス信号として、(様々な歴史的な経緯ののちに)救難信号として定められたものだった。つまりユさんの言う通りだった! 単語的な意味はなかったのだ。「Save Our Souls」や「Save Our Ship」の略という説も唱えられているらしいが、これらは後づけに考案された誤説のようだった。ていうか「・・・ーーー・・・って『はいよろこんで』の「トントントンツーツーツートントントン」じゃないか。
ユさんの話はすごく面白かった。感心した。知識の源泉がアド街や忍たま乱太郎なのも含めて面白かった。テレビっ子だ。税金の仕組みについて学ぶ暇があったら、こういう言葉の由来や歴史について延々と調べていたいな。固定資産税とかカロリーの話は全然よくわかんなかった。
帰宅。楽しかったな。

寝る前に、また姉(爆寝三昧院ゆきぴ)のファンアート描いた。なんかニコニコ大百科に掲載されてるっぽいイラストになったかも。
メジロ発見
もうそんな季節。
地名の「目白」の由来は、江戸五色不動(目黒、目白、目赤、目青、目黄)のうちの目白不動尊が祀られているから。