僕にとって、

2024 - 09 - 28

東京ゲームショウ3日目。今日から一般参加デーです! あっ告知ツイートのノリで書いてしまいました。今日は朝から姉が手伝いに来てくれたので、不安は小さかったです。でも昨晩はなぜか2時間しか寝られなかったため、最初からあまり正気でいられなかった。まあTGSはお祭りなのだし、トランス状態で臨むくらいがちょうどいいのかもしれない。

姉は、クラッシュ・バンディクーのぬいぐるみをつけてきていた。最近、ナムコ限定でクラッシュがクレーンゲームの景品になっているのだ。姉は昨日入手してきたらしい。クラッシュのキャラクターデザインは欧米ベースのものと日本ベースのもので大きく違うのだが、これは古き良き日本ベースデザインだ。でも、腕の生えている位置が下すぎる気がする。

これこれ。僕の知ってるクラッシュは、腕が口の横から生えている。

設営準備もほどほどに、開場の合図が告げられた。一般参加日は10:00に開館と告知されるが、それは混雑緩和のための嘘で、実際には9:30から始まる。

今日は、昨日までの2倍以上の数のお客さんが来た。たくさんの人がDeath the Guitarを触ってくれて、ひじょうに参考になった。嬉しい感想ばかりもらった。やっぱこのゲーム、いけるぞ。面白くなれる。

知り合いとも、またたくさん再会した。僕はTGS1日目の時点で、すでに一通りの知り合いとは顔を合わせた気になっていた。しかしそれは勘違いだった。顔見知りはまだまだいた。僕はいつの間にか、こんなに交友関係が広がっていたのだ。

みんな良い人で、素敵な日になったな。「良い人」というのは、僕の作ったゲームや僕自身のことを気にかけてくれていたり、身の上話などを気兼ねなくしてくれたり、僕の言うことに耳を傾けてくれたりなど……とにかく誰とも気楽にコミュニケーションができて、心があたたかくなった。最近の僕はゲーム作りの進捗がひどいせいで、ゲームにまつわる交友関係にもなんとなく不安とか、恥ずかしさを覚えていた。でも、それはどうやら無用の心配だったみたいだ。みんな、良い人なのであった。

心に余裕ができたので、ブースを姉に任せてすこしイベント会場を回ってみようと思った。よく考えたらTGSはお祭りなのだ。昨日まで緊張していて、忘れてた。楽しんでみよう。

カプコンの、モンスターハンター新作のブース。飾りつけがエスニックだ。

最近話題のパルワールドのブース。すごい豪華だな。

ディスコードのブース、いい雰囲気。ディスコードが物理的にブースを出しているということが、それだけでちょっと嬉しい。

以前出演していた番組『東京パソコンクラブ』もインディーに出展ブースを持っていた。企画で僕が開発したADVゲーム『デンパトウ』を展示してくれていた! 知らなかった。教えてくれたらよかったのに。タワー型コンピュータの中に、乃木坂メンバーのアクスタが入れられていた。

制作スタッフの方々とも、久しぶりに顔を合わせた。懐かしい気持ちになった。東パソの仕事は、スタッフとも距離が近いフランクな現場だった。撮影ロケの休憩時間中に、机に向かって作業するスタッフさんの背中を覚えている。動画編集ソフトで、もくもくと次回放送分の映像データに、撮り下ろした素材を挿入したり、カットしたりしていた。

自分のブースの近くに、ミツバチのゲームを制作しているブラジルの開発チームがいた。全員黄色い服に身を包み、こんなふうにミツバチのコスチュームをしていてかわいかった。こういうグッズなどの展開でプロジェクトを盛り上げるの、憧れるなー。自分はどうしても、ステッカーとかクリアファイルみたいなゲーム本体以外のものを作るのがめんどくさいというか、そこまで行く心の余裕がなくて、できない。いつか作るか。ギターくんの、ぬいぐるみ。

ゲーム関係のお知り合いに「トロヤさんって友達いますか?」と訊かれた。いますと答えると、「じゃあこれ、お友達とやってください」と家でできるリアル脱出ゲームみたいなやつをくれた!? こんなのもらって良いの? 4,500円って書いてあるけど? すごい差し入れだなと思いつつ、ありがたく受け取った。今度やろう。

その人は、ポケモンスリープコラボの蒸気でホットアイマスクもくれた。今晩使おう。差し入れという行為も、僕はなかなか自然にできない。そもそも発想に思い至らないことが多い。今度のイベントでは、配るか。バターバトラー。

他にもいろいろな、人。Unity1Weekで気になっていた人や、学生選手権で関わった人、そしていつもDeath the Guitarのブースに遊びに来てくれるお客さんとも、顔を見て長く話すことができた。なんなんだ今日は。本当に良い日だな。心が洗われる日だ。思い返すと、なんだか涙が出そうだ。ゲームを作っていたから、今日があった。ゲームのおかげで生きる勇気が湧くのだ。

TGS3日目も、無事終了した。

僕と姉は話し足りなくて、サイゼリヤに行った。

ラム肉の串を食べた。姉は、皿に残ったスパイス粉末を指さして「小さい秋だ」と言った。

僕の姉は、スマホでとある日記アプリを使っていた。その中身を見せてもらった。そこには、落ち込んだ自分を鼓舞するような言葉や、怒りや悲しみに昂った気持ちを落ち着かせ、冷静を取り戻そうとする言葉が書いてあった。日記アプリの中で、姉は自分自身に話しかけていた。

姉は、周りの人に懐かれやすい。僕も姉には相当気を許している。姉の前だと僕は、普段人前ではセーブせざるを得ないクネクネした多動的な振る舞いを隠さずにすむ。それに、思っていることを思いついたままに、躊躇わずに口に出してしまう。姉はふざけたことをたくさん言う人だけど、同時に真面目かつ面倒見が良く、とても聞き上手なのだ。相手の心を解きほぐすことができる。

しかし、姉自身はすごく苦戦しながら生きているように思った。彼女は誰も見ていないところで何度も泣いてることを、その日記が物語っていた。人前の姉は、弱音を吐く暇があったらユーモアを吐く。だから、ここに綴られている少女みたいな一生懸命の本当の心は、誰にも知られないまま、ずっと彼女の中だけで眠らされてきたのだ。

僕は、くらってしまった。僕の姉はなんてかわいそうで、かわいいんだ、と思った。手で顔を覆って「お姉ちゃん、かわいすぎる」と裏声で言った。姉は「私かわいいっしょ」と言って笑った。僕は「その笑顔もかわいいんだけど。笑ってるのに目の筋肉だけ泣いているみたいな形。染みついたお姉ちゃんの人格が現れている気がする」と言った。「やっぱ、顔に滲み出ちゃうのかな」姉は笑いながら、目には涙が溜まってきた。僕はかわいすぎると叫んで、テーブルに自分の頬を叩きつけた。そのまま、目の前(眼球の前)にあったフォークの柄を、瞼でグッとつかんだ。そのままフォークを持ち上げようとし、上手く行かずカチャカチャ音を鳴らした。姉の前だと、僕はこういう「動き」を発揮してしまう。他人の前でこれをやると一発で信頼を失うだろうが、姉はやっぱり包容力のある人だ。姉は、「結局貧乏くじを引くのは、長女なんですよ」と言った。

姉は自らの豊かな内面を、自分だけの日記にしまい込んでいる。その奥ゆかしさに比べたら、僕はなんてあざとい自己主張をしているのだろう。僕は自分の日記、つまりこの記録を、誰でも見られる場所にアーカイブしている。ただしここには、SNSのような相互性はほぼ無い。欲張りだ。僕は周囲に対し、一方的に自分の内面を曝け出す。それに対する読み手からのフィードバックは、一切シャットアウトする。僕はこのような身勝手なアジールを築き、閉じ籠っているのだ。こんな構造、ずるいだろう。丁寧に一つ一つ慈しんでいくような姉の人付き合いに比べたら、僕はとても阿漕な商売をしているように思えた。

姉は頭の中でずっと考えていて、人知れず闘っている。自らのこじれたナイーブと、日々向き合っている。大人になろうともがいている。そして着実に、成長していっている。こんなに応援しがいのある素敵な人は、なかなかいない。姉の魅力は、もっとたくさんの人に気づかれるべきだ。

というサイゼリヤ。3時間くらい話していた。

サイゼの看板の内側は、白い。何も書かれていない。しかし問題は無い。客がサイゼに入った時点で、看板は客寄せの業務を完了しているのだから。この裏面の白さは、定時で上がる者が湛える表情と同じ、毅然とした白さだ。

明日はTGS最終日だ。手伝いの人が来る予定はなく、ワンオペになりそうだった。でも僕は、とても一人で回す自信がなかった。そこで姉に、一人なのすごい嫌なので、明日もまた手伝いに来てくれない? と頼んでみた。姉は、行くよー、と言ってくれた。

ヒヒーン。