ココロとカラダ、まだまだ進化できる
徹夜した。電車で、十数駅離れたところにある巨大なスポーツ用品店に行った。徹夜してでも、プールで泳ぐのだ。俺は。
店内をぐるぐる回って、競泳水着ゾーンを見つけた。色々なデザインの水着が並んでいた。僕は一番安いやつを選んだ。そばを子供が走って過ぎ去った。次にその母親らしき人が通り過ぎて「〇〇、どこ行ったの。まったくいい加減にしろよ、まじでさあ」と大声で怒鳴った。その声が怖かった。
水泳帽とゴーグルも選んだ。どちらもとにかく安価なやつだ。ゴーグルは、表面が黄金虫みたいに光っているやつとそうでないやつがあるけど、光ることのメリットは何なんだろう。ゴーグルは、ハイレベルを追求すると周りのラバーが無いタイプが最適解になるようだ。飛び込み時に外れにくいし、水の抵抗も減る。なんにせよ僕は安価なやつを選んだ。普通に黒色で、ラバーもあった。
ワンセット買った。レジの人に、今日から水泳を始めることがばればれだった。僕は徹夜明けで、目が充血していた。頭も働いておらず、自分がなんでこんな意味不明な場所に、朝っぱらに、いるのか、わからなかった。

信じて、いいんだな。
電車に乗ってバスに乗って、ヘロヘロで、市民運動会館に着いた。先日レクチャーを受けた通り、チケットを買って更衣室へ向かった。買いたての水着を履いた。ハサミがないから、商品タグを切るのに難儀した。
通路に自動で熱いシャワーが出る装置があって、僕は洗浄された。僕はプールサイドに出た。そこで泳いでいたのは2人、チャパチャパと遊ぶ親子が1組、水中歩行コースで歩いている人が2人いた。大学生のバイトらしきライフセーバーが、やたらいた。8人くらいいた。
とりあえずプールに身体を浸して、25メートル歩いてみた。行けそうだと思って、25メートル平泳ぎしてみた。手足を伸ばして水中で、鼻から泡を出す。手をかき、息継ぎをする。足で水を蹴る。こんな感じだっけ? 息継ぎの時に、まだ肺に息が残っているから、慌てて吐きだしてから吸う人になっているのだけど、これでいいのかな。水中で全部吐いてしまう方が効率的かも。
クロールにも挑戦したぜ。足でザバザバ水面を蹴る。すごいうるさい音が響いてるけど、大丈夫かな。他の人はもっと静かにクロールしていた。両手で水を、かく! かく! 腕が細くて、かけている気がしない! 大丈夫か? そして、息継ぎ。首を横に傾げて、その隙に、吸う! 水を飲む! ゴホェ!
クロールは、平泳ぎの8倍くらい疲れた。僕は25メートルを1本泳いだだけで、肩で息をして、心臓の鼓動が高鳴ってしまった。腕もへとへとで、力が入らなかった。椅子に座って休んだ。
もういいや。プールを出た。
わかったことは、クロールはやりようによっては一瞬で今の自分の体力を限界まで使い果たしてしまえるということだ。時間効率的には良い。水泳は効率がいい。泳ぐのはめっちゃ楽しかった。床のマス目が、屈折して揺らいでいた。
また来よう。次はyoutubeで正しい泳ぎ方みたいなのを調べてからまた来よう。ママさんバレー集団の後ろを歩きながら、そう思った。
大学に行った。
今日の授業は、アイトラッキングを利用して自機が自分の視線の方向に動くソフトを使って、軌跡を描画するというものだった。

前の旅行で壊れたオタマトーンが、友達の手によって修理されていた。輪ゴムを猿轡のように噛まされ、ビニールテープでがんじがらめにされていた。こうまでしてなお、歌い続けるというのか。オタマトーン。
帰ったら、一瞬で寝ていた。水泳の疲労効果を実感した。すぐに寝ちゃったら、あんまり意味ないな。これを継続して、やがて体力をつけて、日々のタスクに活力をもって向き合えるようにせねば意味がない。ココロとカラダ、まだまだ進化できる。