イ。-椅子の経年劣化について-

総合高速検測車、DAXが通り過ぎた。僕は「DAX」とつぶやいた。
そういえば、ダックスフンドって言う人とダックスフントって言う人がいる。僕はドイツ語を選択していたので「フント」派だ。
学校に1時間遅刻して行ったら、教室は真っ暗で『美と殺戮のすべて』というドキュメンタリー映画が上映されていた。
作ろうと思っている作品のプランを、ノートに書いた。それを先生に見せに行った。
僕は大学で、あまり先生に相談するということをやってこなかった。特に聞きたい具体的な質問がなかったからだ。作品をつくるときに突き当たる壁は多くが「なんか不安……」みたいな漠然としたものだった。先生に頼るにしても、なんと言えばいいのかわからなかった。「先生〜わからないけど不安なんです〜」とでも言ったら、張り倒されるんじゃないかと……。しかし周りを見てみると、友達や他のクラスメイトたちは、ほとんど駄弁りにいくくらいの甘いモチベーションだったり、逆に人生相談くらい壮大な内容を抱えて先生に話しかけに行っているようだった。そのような曖昧な持ちかけにも、先生は気軽に応対しているように見えた。そういうのでいいのか。僕も、もっとラフに講師を利用してみようと思った。
先生の前に行って、ノートを広げて見せた。一通りの内容を説明し、「こんな感じなんですけど、何か思うことありますか?」とゆるい質問をしてみた。すると先生は、すらすらとコンセプトの穴を指摘するようなことを言ったり、クリティカルな質問をしてくれた。僕は、いろいろな意味でなるほどと思った。先生に相談するというのは、このくらいの温度感でいいのか。有意義なフィードバックを得ることができた。
僕は尻から墜落した。
ン!?

立ち上がって振り向くと、イスの座面が割れていた。無意識に負荷の高い座り方をしてしまったみたいだ。これは、僕が壊した感じか? 美大は照明やカメラなど高額な備品の貸与がよく行われるからか、何かにつけて「大学の機材は、壊したら自腹で補填すること」と念を押される。このイスを素直に持っていって、研究室から責任を問われ弁償させられたりしたらどうしよう。僕は焦った。一部始終を見ていた友達は「その破片で脚でも切れば?」と血も涙もないことを言った。僕は正直に、イスを研究室に持っていった。
研究室の人は「経年劣化だね〜」と言った。イスと破片はスムーズに回収され、僕は帰された。安心した。昨日の特別奨学金が、イス代に消えることはなさそうだった。

やったー
帰宅後、眠いなか、JavaScriptを使ってなんかしらのアプリケーションを作ろうと格闘した。やりたかったことの半分くらいまでできた。JavaScriptは、記法がラフすぎて慣れない。書き方が何通りもあるので、人のコードを解読するのに時間がかかる。C#の堅苦しい感じが恋しくなるな。
恋しさとともに寝た。今日は色々頑張った。でも明日の方が頑張りたい。
明日は、Javascriptの制作を完成させて、就活相談をして、風呂掃除を完了して、Death the Guitarの作業と、就活の直近のスケジュールを立てるのが目標。もし終わったらSANABIでも遊びたい。
今日はなんてまともな一日だったのだろう。僕はいまや、漂白された正常の世界に片足を突っ込んでいる。まともって最高。まともの湯に浸かりたい。でもお湯に浸かるには、風呂掃除を終わらせねばならない。今日の風呂掃除は、マジックリンがなくなったから中断された。明日本気を出す。
まともな睡眠を、まともに取る。