出木杉英才
起きてスプラトゥーン3。このゲームは楽しすぎて危険。
今日は精神状態が良かった。
普段の僕(どの状態が普段なのか、もはやわからない)は、何らかの有意な情報、いわゆる「刺激」を受け取ると、すぐにウッとなってしまう。ウッとなったが最後、五月雨式にメンタルを崩していき、動けなくなるのが鉄板だ。「刺激」というのは具体的には、近々の予定に思いを馳せて現状のやばさを再認識してしまったり、人との会話が上手くいかなかったりして嫌われているんじゃないかという恐れが膨らんだり、タイムラインで強烈なイデオロギーを含んだポストを見かけたりなど、大小様々な「何らか」だ。
そして今日も、例によって刺激を食らった。でもなぜか、それでも僕の意欲は減退しなかった。頭が沸騰してくる感じもなく、もたれる疲労もなかった。ス——ンとしている。今日は、いわゆる調子がいい日なのかもしれない。いつぶりだろう。
いけるか?
僕はなるべく自分に気づかれないように、パソコンを開いた。そして、Adobe InDesignを立ち上げてみた。僕は指を動かした。「ポートフォリオ」という文字列が打てた。
僕は、ポートフォリオ制作を進めることができた。
ウオー。
ウオオー。
わからねー。ゲームプランナーのポートフォリオって、どう作ればいいんだ。記載すべき情報の分量感がわからない。デザイナーやエンジニア志望はポートフォリオの提出が常識だが、プランナー志望は、そもそも選考過程で提出を求められていない場合が多い。でも、「見せたかったら見せてもいいよ」というスタンスの会社もあるので、就活戦略上、ポートフォリオは作らざるを得ないのだ。学生時代にゲームを作っているなら、それをアピールしないわけにはいかないから。
ポートフォリオが通用する選考もまた、事前提出が可能な場合と、事前提出が不可だから面接でいきなり手渡しするしかない場合に分かれる。このように、プランナー志望のポートフォリオは会社によって読まれかたの温度感が違うのだ。前者ならわりかし大ボリュームの情報を詰め込んでも目を通してもらえるが、後者の場合は面接時間が限られている以上、ページ数は絞るべきだし、読み飛ばされることも覚悟すべきだ。わかんないよ〜。
僕は知り合いのゲーム開発者の方に、DMで「ポートフォリオ見せてください!」と頼んでみた。彼は見せてくれた。見た。ゲゲゲ! 僕は頭を抱えた。
この人のポートフォリオのクオリティが、僕がなんとなく想定していた「大体こんなもんやろ」のクオリティを何倍も上回る仕上がりだったのだ。情報の無駄のない配置、自分が何者かを伝える言葉選び、そして何より彼の実力を示す作品の数々……と、それらの充実したアーカイブ。僕は自分が作ったポートフォリオを見て、恥ずかしくなってしまった。あー。その人のはテクニカルアーティスト志望としてのポートフォリオだったので、プランナー志望の僕はまるまる真似するわけにはいかないが、なんにせよ大いに参考になった。
『ダンダダン』5話を見つつ、僕はポートフォリオ制作を続けた。結局彼の見せてくれたポートフォリオのレイアウトをほとんど真似しつつ、自分の作品について分析と言語化を進めていった。DMで「トロヤさん、一眼とか持ってますか?」と訊かれた。彼は明日、僕に一眼レフのカメラを渡してくれることになった。僕に貸してくれるらしい。ポートフォリオに掲載するために、質の良い写真が必要になるらしい。何から何まで。僕はまぶしくなった。彼が。良い人すぎて。
気づいたら朝7時。あー、終わらなかった。全然終わることができなかった。でも今日は集中して作業をすることができた。稀に見る、メンタルの調子が良い日だった。明日の自分も今日みたいだったらいいなと祈りつつ、寝る。
パートナーは『Factorio』に夢中になり、話しかけても無視される回数が増えた。
お寝ん。