トロヤくんに10の質問

2024 - 12 - 15

今日は朝6時に起きて、家族で登山をする計画だった。しかし起きたら13時だった。家族はいなくなっていた。メモに「猫に餌をあげといて」と書いてあった。猫に餌をあげた。布団で寝そべりながらYouTubeで腰痛予防の動画を見漁っていたら、いつの間にか16時になっていた。腰にもっとも負担がかからない体勢は、寝そべることだった。しかし、寝そべっている限り、人生の駒は前に進まない。生きることは、腰に負担をかけることだ。起きてからまだ何も食べていないことに気づいて、起きあがった。腰に負担をかけながら、朝ごはんを食べた。布団を畳んで、机に到着した。僕は腰への負担が少ないらしい「坐骨座り」で椅子に腰かけた。坐骨の上に重心を置く座り方。「座」という漢字に「坐」と入っているくらいだから、これがベストなのは明らか。僕は今までの「仙骨座り」に別れを告げる。これからは「坐」の時代。でも、少し気を抜くと体勢がゆるんで「仙」になってしまっていた。慌てて「坐」に戻す。坐、仙、坐、仙、坐、仙。易きに流れようとする、自分との闘い。あと、いくらよい座り方をしようと、そもそも「座る」自体が人体にとってサステナブルな行為ではないので、30分に一度くらいは立ち上がったり歩き回ったりした方が良いらしいです。17時21分になっている。椅子の上でもぞもぞしてるだけで、こんなに時間が経つ!? みんな!? あ、そろそろ立ち上がらなきゃ! 一旦パソコンから離れます。こいつ、何がしたい。

登山を終えた家族が、帰ってきていた。リビングでは、祖母は疲れたようすでソファに寝転んでいた。猫がその祖母の膝の上で丸くなっている。僕は近づいて猫を撫でようとした。すると祖母がシャーペンを僕の腕に突き刺そうとしてきた。僕はキャーと腕をひっこめた。祖母は「あんた夕べ遅う遅うまで夜ふかしして、朝6時に起きれるわけないじゃない。最初から山登り行く気、なかったんでしょ。どうして無理だってわかってる約束をするの」と言った。僕は「僕もほとんど無理だとは思っていたけど、ワンチャンあるかなと思って」と言った。「ワンチャンってどういう意味」「運良く起きれたら、僕も山登りしたいなって思ってたの」「じゃあもっと早よ寝ないとだめじゃない」「早くは寝られなかったの。学校のある日みたいに、睡眠不足でも無理やり起きれる日もあるから、その可能性に賭けた」「そんなんで私、あんたのぶんもお弁当箱用意してお茶も用意して……あんたが登山行くって言ったときから疑ってたわ。行けないんやったら行かないって初めから言いなさい」「だって無理かもしれないからって最初から断り続けたら、一生一緒にどこにも出かけられないじゃん」などと話した。

僕は祖母に謝り、猫を少し撫でて退散してきた。充分歩き回ることができたな。僕は再び椅子に座った、いや、坐った。

『D_ELL』を完成させにいく。ちょうど学校の課題で、講評で提出した作品のスクラップ・ブック(作品制作の過程でできた、リサーチ、ドローイング、素材などをアーカイブしたもの)の提出を求められていた。あまり深く考えず、制作途中で使ったすべてを一つのドキュメントにペタペタまとめてみよう。

21時44分。何もしていない。ドキュメントにペタペタ。してない。しろよな。ずっと漫画読んでた。座ると腰のことしか考えられなくなって、想像で痛くなってくる。困った。立ちながら読んだ。『メイドインアビス』と『アル中病棟』。明日学校に行きたいから、まだこんな時刻だけど布団を敷いて横になった。早寝したいのだ。学校に行きたい! 学校に行きたい! 寝そべると、天井の灯りが目にまぶしい。明るさをすこし弱めた。まあ許せる明るさ。

アル中病棟を読んでると、どこか施設に入ってみたくなる。そこで時間を過ごすこと自体が、日々の仕事となる施設。病棟、学校、刑務所。なんでも良いけれど。『ショーシャンクの空に』『ノルウェイの森』『パンドラの匣』など。けしからん欲望かもしれないですが、誰だって思うのではないですか。閉じ込められて、管理された生活を送りたいと。自由は手に余る。自由をうまく使えない自分が情けなくなって、苦しくなる。でも病院も学校も刑務所も、ゆくゆくはそこから出ることを促している。自由は容易に手放すことができない。僕のような何者でもない者は、部屋に入りきらない自由に押しつぶされて身動きが取れない。嫌になる。

きっと、施設に入ったら入ったで外が恋しくなるんだ。外泊の許可が出て久しぶりに外の世界を歩こうものなら、きっと往来の人々の輝かしさに、胸が締まるんだ。彼らの目には、未来が映っている。今日はどんなふうに過ごそうかな。そんな可能性のまたたきが、世界中の空気を満たしているんだ。僕だけが、それを見ることができないんだ。この違いに苦しみ悶え、僕は願うのだ。「自由になりたい」。

今この環境で、生きる策をさぐるんだ。僕は望んでここにいる。

眠れない。学校行きたい。

質問が10件ほど届いておりますので、今日はそれに答えますね。質問を送ってくださった方、ありがとうございます。当サイトに質問投稿フォームとかはないので、さっきパートナーに「なんでも答えるので、僕に質問してください」とお願いして、10個もぎ取ってきた。答えてゆきます。

あなたにとって、ユーモアでもって対処しないことには耐えられないものは何ですか?
What can you bear only with humor?

難っ。どういう意味。引用元を見てみたら、海外の映画メディアがヴィム・ヴェンダース監督に尋ねた「10の質問」がまるっとそのまま送られてきていた。そんな。ヴィムヴェンダースはこの質問にどう答えたのか、記事を覗いてみたら「Questionnaires.(アンケート)」と答えていた。勝てない。

僕なりに答えてみるか。真面目に考えます。いやユーモアを介さないと耐えられないものを「真面目に考えて」見つけてしまったら、その瞬間に倒れてしまうのか。思えば僕は、ユーモアを必須の防護壁として使うことはない気がする。あくまで、余裕のあるときに言うだけ。基本的にほとんどのことを、シリアスに考えることができる。僕が何かにユーモアで応答することはあるけれど、それは逃げているわけではない。あくまでユーモアで返す方がヘルシーだからで、別にシリアスな言葉を尽くして応答することもできる。というわけで、ユーモアをもってしか耐えられないものはない。ユーモアが独自の役割を背負わされるとき、そこには矛盾が生じる。「笑いの力は、人の命も救うんや!」などのスローガンは、それ自体がシリアスな命題になっていて、自己免疫疾患を起こしている。ただ、ユーモアは使うほうが長生きはできる。

あなたは、自らの自己批判に説得されていますか?
Are you convinced of your self-criticism?

はい。日夜説得されている。困っている。助けて。でも自己批判を提出する自分や、それを納得する自分の存在は揺るぎない。不思議だ。自分を破壊しようとしている大元のブレインが、案外くっきりと存在を保っているのだ。それは自己批判といえど寸前の過去の自分を批判しているから無事なのか、前頭葉と側坐核の連携が悪いせいでシャバい自己批判しかできていないからなのか、あるいはユーモアが機能して自己矛盾のループを回避しているのか。わからないけど、なんにせよ、助けてください。

あなたの、批判されうる点は何ですか?
What could be held against you?

寝坊する、遅刻する、ドタキャンする、返信が遅い、金遣いが荒い、清潔感がない、物をすぐ壊す、共感性が低い、モラルがない、言って良いことと良くないことの区別がつかない、できないことをできると言う、できることをできると言えない、人と話すとき口を手で覆ってしまう、自分の知っていることは相手も知っているものとして話してしまう、相手の話を先回りして潰してしまう、落語家を殺そうとしてしまう、人目を気にしすぎている、誰からも嫌われていると思い込む、その割に心を開くのも早い、心を開くと無遠慮に自分のパーソナル情報をカミングアウトし続けて歯止めがかからない、自分のことばかり考えている

あなたは、あなた自身の良い友ですか?
Are you a good friend to yourself?

ダニ

金のためであってもこれはしないとあなたが考えることは何ですか?
What don’t you do for money?

これから手術を受けるとき、なぜか麻酔医だけ座標がずれていて麻酔が隣の部屋の別の奴にかけられて、俺は麻酔なしのまま腹をメスで裂かれながら、手術室ごと宇宙空間に飛ばされる。医者にすべての指を切断されすべての肘と膝を逆方向に折られ全身の皮膚を剥がされ、そのままコールドスリープされる。

これがないおかげで自分は幸福だとあなたが考えるものは何ですか?
What do you lack in happiness?

玄関の柵に高圧電流が流れてなくてよかった。

希望に満ちているとあなたが感じるものは何ですか?
What fills you with hope?

コーヒー、ゲーム、映画、道、アイソスタシー、動物、建物、有刺鉄線、あずきのチカラ、パン、なめろう、ペンギン、小説、日差し、紅茶、牛乳、グレープフルーツ、ナス、川、想像の北海道、きのこ、カフェ、竹、サボテン、電車、自然公園、地図、アニメーション、踊り、音楽、ふわふわドーム、クラッカー、にチーズつけて食べる、山道を登っていたらいつのまにか雲の中に入っている

あなたにとって、これなしには生きられないと言える発明品は何ですか?
What invention could you not live without?

エアコン

あなたの人生の何かを一晩で変えられるとしたら、何を変えますか?
If you could change something in your life overnight, what would it be?

奨学金を返済しなくていいやつにして。

あなたは夢を見ますか? 見るという場合、くりかえし見る夢はありますか?
Do you dream, and if so, are there recurring dreams?

よく見る。何度も夢に出てくるモチーフがある。

まず巨大な公衆トイレが本当によく出てくる。床も壁も糞尿まみれになっている。仕切りのない丸見えの便器がたくさん置いてある。トイレの中には浴場や更衣室もあって、浴場では人がすし詰めになって湯に浸かっている。この公衆トイレや大浴場は、山の頂上にある丘の最も高いところにある。丘を下った開けたところには遊具などのある大きめの公園があって、親子連れが遊んでいる。この山を下る道は二つあって、僕はだいたい裏側のマイナーなルートから下山する。それは尾根に沿って降りていく道で、下がっていくと高いフェンスの向こうに、団地がある。フェンスをよじ登って団地に入ると、階段の踊り場からまぶしい空が見えて、懐かしい感じがする。一室に入ると、虫や植物が瓶に入れられて置かれている。団地を出ると夜で、市営のバスの最終便を使って駅に戻る。バスには自分と運転手以外誰も乗っていない。駅に着くと特急列車に乗ろうとするが、毎回路線か方向を間違えて、行きたいところにたどり着けない。こんな夢をよく見る。

あと、とにかく高く打ち上げられて落下する夢をよく見る。巨大なカニの腕に弾かれるとか、異常なトランポリンで跳ねてしまうとか、力士に胴上げされるとか。昨晩は、海上を高速で進むアトラクションに乗っていて、そこから自分だけで振り落とされて、海を泳ぐシャチと他の船に挟まれてすり潰されそうになるところをなんとか避けたと思ったらシャチの尾びれで吹き飛ばされていた。上空300メートルくらいまで飛ばされて、落下した。落下する時は本当に現実の自由落下の感触があって死ぬほど怖い。地面が迫る時にはだいたい死かものすごい激痛を覚悟している。地面に叩きつけられて、動けなくなる。痛みはないが、身体はだいたいめちゃくちゃになっていて、少しずつ意識がうすれる。自分はこのまま眠り、もう目覚めないんだと悟る。死ぬってこういうことなのかと思い、恐怖に襲われる。そのままフェードアウトして、死ぬ。死ぬ瞬間に、だいたい目が醒める。

あと非常に感覚的な夢だけど、ブラウン管の静電気みたいな感じの温度と匂いを帯びた面のようなものがあって、それが「ドン」という低音を伴ってもっともっと大きい別の色の面に上書きされる。それが繰り返される。自分の体が耐えられないほどくすぐったくなり、気持ち悪くなる。そのくすぐったさが永久に続く。