The Manual of Coexistence
何時に起きたか覚えていない。17時くらいまでウーと横になっていた。薬は枕元にあったけど、それを飲むための食糧(食後状態になるための)を、昨晩なんとなく食べてしまったせいで、あっても服用できなかった。水もなかった(本当はあったのだが、カーテンの向こう側に隠れていたため気づかなかった)。ウーと横になっていた。

注文したスタンディングデスクの箱を持って、家出を決行した。重い。まあ、筋肉トレーニングになったからいいや。バスを降りるとパートナーが迎えに来てくれて、運んでくれた。
これからは別の路線の駅が最寄りになるので、その路線図を見た。親友が使う路線とどこで交わっているかを調べてみたりした。

到着して組み立てた。昇降式デスク。高さが八段階あってよかった。

身体を板にのせて、つま先立ちでだら~としてみたりする。うおお。胸の血管が詰まって、じわじわと、うおお、これは、うおお。満たされる! 両足のつま先をデスクの脚部分にひっかけて、太腿で身体を支えたりしてみる。プルプルする。これはこれは! 満たされる! フィジェットとしてのアフォーダンスが満載だ。豊かだ。これがあれば、ソファの手すりも、テーブルもなんでも椅子になる。キャスター付きなので、縦横無尽に動き回れる。スーパーマーケットのカートが、家にあるみたい! パートナーとツインピークス最終話(シーズン2)を見ている最中も、このデスクに両腕を預けてもたれてみたり、縦向きにして上半身を寝かせてみたり、あんな姿勢やこんな姿勢で視聴することができた。ツインピークス最終話はすごかった。なかなかいい買い物ができた。一つ困ったのは、天板の高さを一番下にしても通常の椅子に座った状態からだとやや高いことだ。だから着座での作業に用いるためには、椅子側にかさ増しなどの工夫が必要になる。もう一番下よりもうひとつ下の高さがあってほしかったな。でも、今のところひじょうに満足しています。豊かな余白を宿した製品だ。家の形を作る様々な配置物が、デスクとの関係性として見てみることで、思わぬアフォーダンスを開花させる。
これからパートナーの家に住まわせてもらうことになるので、探索をした。

The Chicago Manual of Style 18という分厚い本が二冊あった。変な家! 探索終わり。
暖房とサーキュレーターを回して、各部屋の室温を手を上げたり床に近づけたりして対流を確かめた。僕とパートナーは温度の感覚がまったく相容れないので、うまく折り合いをつけられるか不安だ。お互いが感じる暑さ/寒さは、共感を持って理解することはできない。エアコンだけではお互いの理想の温度に達することはできないから、腹巻きとか半纏とか買って、僕単体に暖かさを付加する工夫をしてみよう。そうすれば夏場の強冷房にもちょうどいいかもしれない。

姉がスプラトゥーン3の僕の姿を背景透過素材にしてくれた。かわいい。この画像ではプライムシューターコラボを持っているが、最近プライムシューターに持ち替えた。姉はVTuberとしてYouTubeにゲーム実況動画を上げている。そういえば僕も昔、VTuberにでもなるかと思ってアバターの設定を考えたことがある(飽きてやめたけど)。

そのラフ。塾帰り系VTuber「宇和差(うわさ)マルキ」(名前はいくつか候補あって確定してない)。ベースカラーは青みがかった緑。塾で強制的に購入させられる専用の鞄を背負っている。夏服の半袖シャツに白いベストを着ている。
設定としては富裕層の家庭の次男で、年齢は11歳。国立の小学校に通い、放課後は日能研みたいな塾に週5で通わせられている。しかし成績は振るわない。6つ上の兄「宇和差ハルキ」は名門私立高校に通っており、文武両道で生徒会長も務めている。両親は出来の良いハルキのことばかり寵愛し、マルキは彼らから「お前もお兄ちゃんみたいにしっかりしなさい」と小言を受け続けてきた。そのため人並み以上に劣等感が強い。愛着障害に陥っておりクラスメイトとも距離感がうまく掴めず、孤立気味。4年生のとき、担任の先生に恋をしていた。振り向いてもらうために勉強に精を出した。しかし結果は振るわず、自暴自棄になった彼は、その後常軌を逸したアプローチを先生にしかけた。色々あって先生は懲戒免職となり、両親はこれまで以上にマルキに厳しく接するようになった。そんなマルキが唯一楽しめることが、兄から教わったゲームだった。兄はいつも優しく、ゲームに付き合ってくれた。マルキは特別ゲームセンスがあるわけでもなかったが、兄と自分を繋げてくれるゲームという存在に魅了され、打ち込んだ。ある対戦ゲームでついに兄を打ち負かした日、兄に「お手上げだよ。マルキはすごいなあ」と言われた。その日から、マルキは塾帰りの深夜に兄のPCを拝借して、オンラインゲームを遊ぶようになった。学校の成績は落ちていったが、マルキはそれよりもゲーム内のレートを気にしていた。承認欲求が高じて、ゲーム配信をするようにもなった。一方で兄は、今やすっかりゲームを遊ばなくなっている。
どうか? いけますかね? 塾帰りVTuber。
最近はもっぱら、スプラトゥーン3でXマッチをやるところを配信しているらしい。ネットの掲示板で「XP2000未満のやつは人権ない」という書き込みを見てから、全ルールXP2000以上に乗せることを目指し、日々悪態をつきながらプライムシューターを担いで試合に明け暮れている。配信ではよくキレる。味方にもキレるが、「今の対面負けるやつって僕以外いんの?」など、自分のこともよく責める。コメントへの返答は基本的に淡白だが、配信終了後、コメントをくれた各アカウントの名前を密かにパブリックサーチして、年齢や外見、職業などを特定している。接続数が多いときは、たまに過度に自虐的な演技をして、「そんなことないよ」とコメントでケアされたり、投げ銭をもらうことを狙う。特定の常連視聴者が見ているときはよく図に乗って、その日学校であった嫌な思いをしたエピソードを語り、いじけた振る舞いをしてコメントで慰めてもらう、というロールプレイに興じる。初めは本当にあったエピソードを語っていたが、その内容を盛っていったのが次第にエスカレートして、最近は捏造エピソードも語るようになってしまった。自分自身も本当の体験を語っているのか嘘を語っているのか、よくわからなくなってきている。
ぜひチャンネル登録とグッドボタンをお願いします。塾帰りVTuber宇和差マルキ。あ、いないのか……。あとこれってVTuberの設定じゃなく、架空のYouTube配信者の紹介になってるな。その場合、13歳未満の子供のライブ配信は保護者同伴のもとで行わないとYouTubeのガイドライン違反だし、収益化するなら22時〜翌朝5時の時間帯に配信したら未成年労働にあたるため労働基準法的にもだめだ。
消費できるキャラクターの妄想は普段そんなにしない(そのようなキャラクターでは面白い話が思いつかないから)のだけど、「自分にアバターを与えるならどんな設定にするか」という建付けで考えてみると、さらさらといかにもなキャラクターを思いついてしまった。VTuberの設定ってすぐに希薄化して中の人の人格そのものに塗り替えられる印象がある。だからこそ「どうせ解体されるのはわかってるんで、あくまでそういうキャラをやってるだけです〜」と一歩引いて俯瞰してるスタンスになることを利用して、いくらでも下品な記号を付与したキャラクターを錬成できてしまう。恐ろしいことですね(俯瞰の構え)。
存在しない塾帰りの妄想をしている場合じゃない。存在するパートナーの家で、暮らす。
スタンディングデスクの梱包材を片付けていたら、要らない紙が一枚出た。これをどうすればよいか彼に尋ねたら「もらっとくよ」と言われ、渡したら彼は扉を開けてどこかに行き、処理して戻って来た。でも僕はこれからここに住むのだから、老子の「授人以魚不如授人以漁」的なことを思い、自己判断でも片付けられるように要らない紙を処分する場所を教えてと言った。今さっき彼が行った場所へ案内してもらった。玄関前にA4より一回り大きいサイズの箱があった。「要らない紙は、この箱に入れればいいんですね?」確認するとパートナーは「うん」と言い、その箱の中に積まれた書類をまさぐり、下の方から冊子をひとつ取り出した。それは、この市のごみ捨て分別マニュアルだった。彼はそれを開き、僕に見せた。「ここに素材ごとの捨てかたの違いが書いてあるから、これを参考にすれば正しく分別できるよ」と言った。僕は、なんでどう見ても必要なその分別マニュアルが、この箱から出てくるんだ? と混乱した。「要る紙もここに入れるのか?」と訊いたら、そうみたいだった。要る紙も要らない紙も同じ箱に入れ、処分するときに捨てる紙をより分けているっぽかった。未知の生活パターンで驚いた。なるほど「要る要らないにかかわらず、紙が出たらとりあえず同じ箱に入れる」という割り切りは、毎度の判断に認知リソースを割く必要がなくなるから、たしかに合理的かもしれないな。そこらじゅうに散らばるのを防げそうだ。でも、これから僕もそのルールに従って紙を要不要関係なく箱にまとめてしまうと、処分するときにパートナーが「僕にとって必要な紙かどうか」を判別できず困ってしまいそうだ。僕のほうでは「自分の必要な紙」をあらかじめ分けて置いておくほうが良さそうだ、そのためには、それ用の個人スペースをもらわなくちゃ。人の家に住む以上、一部空間を割譲してもらわざるを得ない。なるべく迷惑のない範囲で、自分のスペースを作る。
寝る。
今日は重たいデスクをここまで運んで来たため、腕がぷるぷる。新生活頑張ろうと思った。明日もまた一度実家に戻って必要なものを取ってきたりしつつ、ユメギドを制作に手をつけたい。ひとまず寝ることか。
デスクを転がして、寝室に持ってきてみた。ベッドも作業用の椅子になる! うおおお。こんなに嬉しいことってない。やはり腰側の高さがすこし足りないので、枕を座布団代わりにした。かさ増し用の座れる何かを買おうかな。
ユメギド〜作りたい〜。
作る〜。
朝6時半。1日目が終わった。