デンパくん
起きて作業した。

木の成長を描いた。

ルンバが届いた。

名前を決めろと言われたので30分ほど悩んで「デンパ」にした。
まずはデンパに、家の形状を覚えてもらう必要がある。そのためには、床に散らばっている物を片づける必要があった。昨日組み立てた棚も利用して、私物はすべて床以外のところに動かした。デンパのホーム(充電、給水所)となるマウントが結構大きく、それを設置する場所を作るために、パートナーが骨を折ってくれた。
パートナーが僕に「これからの意識として、デンパがちゃんと掃除できるように、床に物を置かないよう心がけること。デンパをお迎えする以上、親の責任としてね」と言った。ルンバの効能として、「床に物を置かない習慣ができる」という使用者側への変革があることはよく言われる。僕はこのことに、期待と不安の入り混じった期待不安入り混じりジュースを飲んだような気持ちになっていた。
床に物を置かないことで、僕は僕自身の真の多動性を解放する自遊空間を手に入れる。その一方、床に物を置かないという縛りは同時に僕自身の本能を締めつける心理的な枷にもなるのだ。吉と出るか凶と出るか。まるで期待不安入り混じりジュースを飲んだみたいだ。

デンパくん、部屋を覚えるためにそこらじゅうに頭をぶつけている。そういう設計とはいえ、家電製品がこんなにゴスゴス物にぶつかっているようすには不安をおぼえた。新鮮な体験だった。目が光るんだな。

ああっそこ、出られる? ひとたび椅子の四本脚の内側に入ると、出るのは至難の業だった。デンパは出ようとするも、脚にぶつかっては止まってキョロキョロした。助けたいが、ここで親が手を出すのは野暮だろう。僕は心を鬼にしてスマホをいじった。しばらくすると奇跡的に脱出した。
マッピングが完了した。移動ルートを振り返って、家の形状を推定してくれた。アプリを通して床の素材に応じて水拭きを省略してもらうようにできたり、色々とカスタマイズが効くようだった。おもしろいなー!

巣に帰るデンパ。お尻側から入っててかわいかった。マウントに戻ったあと、筐体下面の水拭き用モップマットやゴミ吸い取り箇所の洗浄のため、少し前後にうごうごしていて、ウォシュレットをやっている人みたいでうけた。
マッピングが完了したので、一度本格的に清掃してみてもらった。

ソファの下とかにいるのおもしろい! 『ハリーポッターとアズカバンの囚人』の凶暴な教科書を思い出した。ソファの脚にぶつかったとき、すこし振動がしてデンパの存在が伝わってきて、ふふっと思った。

パートナーが買い物から帰宅するなり足の裏を負傷して、そのことに気づかず歩き回ったために床に血の跡がたくさんできた。パートナーは慌ててしゃがみ込み、デンパが血を吸い込んでしまう前に、カーリング選手のように動線上に先回りして自分の血痕を拭き消していった。掃除ロボットが二体になった。僕は固唾を呑んで見守った。
清掃が終わった。床はピカピカになり、部屋中がゲロっぽい臭いに包まれた。なんで。キッチンの初回清掃時にモップに生ごみでも付着して、その状態で部屋中を拭いてしまったのかな? しばらくして別のエリアでも動かしてみたら、今度は悪臭は出なかった。マウントに戻った際にきちんと洗浄されたのかも。次からは大丈夫そうだ。
部屋の臭いに気分が悪くなってしまい、寝込んだ。
呪術廻戦のアニメ、もうすぐ見終わる。面白すぎて、放心してしまう。
今日はあまり頭が働かなかったな。
ルンバ来てすごく嬉しい。これからは、床に寝そべってストレッチとかしても埃で喉を痛めることがなくなるといいな。バランスボールも、埃の心配がなくなれば今までよりも安心して身体を預けられるようになりそうだ。明確に生活様式がアップデートされたように感じた。
それにしてもぼんやり体調が悪い。さっさと次の日に行きます。朝ちょっぴり作業できて嬉しかった。