摩擦係数

2025 - 04 - 11

寝る前に散歩をした。太陽が眩しかったから(供述)。

川の流れる水を見て、嬉しい気持ちになった。

爛漫だな。何がとは言わないが。

友達がLINEで、道端に置かれた招き猫が陽射しを浴びているようすをとらえた写真を送ってくれた。あと首から乳首が生えている豚の動画も送られてきた。

帰って寝た。

起きた。16時。まだ外はギリギリ明るいように見えた。もう春なのだ。僕はもう一度散歩しようと思った。旅館で、起きてから温泉に入り直すみたいなムーブ。それやる人多いけど、朝も夜も湯に浸かるなんて、すごいって思う。風呂上がりに顔やら髪やらにぺたぺたつけており、みんなキューティクルへの関心は僕よりも高いことは伺えるのに、風呂には入り直すことができる。その、バランス感覚。

風呂って胸まで浸かると呼吸しにくくならない? 浮力で肺が浮く感じがして、息が上手く吸えなくなる。だから、腰から下だけ浸かれるような段差を探してる。こんなのばっか。

それで、もう一度散歩しようと思って外に出たら雨が降っていた。僕は「ハン」と笑って玄関に戻った。

その後、スプラしてたら窓の外に稲妻が光ったのが見えた。ゴロゴロと雷が鳴りだした。数日前、数人の中高生がグラウンドで落雷に見舞われて救急搬送されたニュースが流れた。これを見て、何を気をつければいいのかわからない。雷って避けようがない。

あと雷に打たれるってどういう負傷なのかもよくわからない。きっとサトシみたいなことでは済まないんだろうな。火傷に近いのかな。雷に打たれた木の幹が裂けて、端っこが燃えているようすは図鑑などで見たことがあるけれど、人間もああなるなら、怖い。軽く調べたら、「麻痺、心停止、致死性不整脈」という電気ショック被害、「皮膚表面、筋肉が焦げる、服が溶ける」などの火傷系、「記憶障害、性格変化」などの脳機能へのダメージなどの恐れがあった。あと、音圧による鼓膜破裂も見逃せない。ありとあらゆる損壊のセットじゃないか。

それが、1秒の予告もなしに僕の身体に落ちてくる。無理すぎる。雷。雷は上から来る。だから、多くの神話において神は上空にいるのだろう。

直撃されたときのお手上げ感は自然災害のなかでも頭抜けているけど、雷被害者の絶対数や台風や地震に比べて恐れられていない感じをみるに、人類はあながち対策できてなくはないんだろうな。避雷針や建物のアースの仕組みなどで、相当モノに出来るようにはなったのだろう。

気象庁の情報を見たら、ひょうや積乱雲のあるところでの外出は避けることが推奨されていた。屋外でどうしようもないときは、高い物体と一定の距離関係にある「保護範囲」に身を隠すことが(下の画像)良いらしい。

自分以外の高い物を囮にして、つかず離れずの位置を維持するのだ。近づくと電撃に巻き込まれるし、離れすぎると今度は自分がターゲットになって終わり。考えるだけで気が狂いそうな状況だ。この電柱が動き始めたりしようものなら、一生思い出に残る日になるだろうな。

カウンセリングを受けた。ここ数日、主体が身体や空間から追い出されるような感覚に苦痛を覚えることが多かったので、そのあたりの話をした。

カウンセリング後、相変わらずスプラトゥーンをしていたら、パートナーが雨に濡れながら帰ってきた。それで安心した。彼は自転車で通勤していたので、雷に打たれないか結構心配していたのだ。パートナーが家に戻ってくるか戻ってこないかも、僕としては祈ることしかできない雷くらい運まかせな事象だ。

ドライブワイパーの射程差を活かして追ってくるスシコラに引き撃ちをしていたら、パートナーが僕の前のテーブルに洋菓子を置いて「あげる」と言った。「ありがとう。これ何?」と訊くと「お菓子」と言われた。エ? 「お菓子」って答えることある? 怒ってるのか? 僕は怖くなった。もう少し解像度上げられないか尋ねると、彼は「フィナンシェ」と答えた。見た感じそうだろうけど。彼からなにか嫌味の感情をぶつけられているのかと思った。「フィナンシェじゃなくて、ぶ、文脈?」と言った。すると、仕事先でもらったと教えてくれた。

僕はトーピードを投げて、そのあと少し言葉を荒らげてしまった。「これを渡して、『お菓子』って説明するの、本当ですか?」「え、だって、『これ何?』って訊いてきたから、お菓子だから、『お菓子だよ』って」「それってかっこよすぎだろ。相場はなんかどこで誰に貰ったみたいなさ」「『これどうしたの?』ってら訊かれたらそう答えるけど、『これ何?』だったから。お菓子だよって」「本当にそう考えたんですか? まあ、いいけど、そういう異文化交流……え、もしかして、喧嘩を……?」などと言った。僕は彼に馬鹿にされていると思ってしまったのだ。

しばらくして、彼は「トロヤくんはスプラ中で画面を見ていたから、これが何かそもそも見えないと思ったから、お菓子であることをまず説明するべきかと思った」と説明してくれた。そう言われると、お菓子と言われたのも納得がいった。僕は自分の被害妄想やバイアスを恥じた。

たかが蟻、されど蟻だ!

夕食の餃子を炒めるとき、ビーカーに注いだ50ccの水を、フライパンに入れた。ジューという音を蓋で閉じ込めた。僕は手に持っていたビーカーを水切りかごに置こうとしたら、パートナーが「うわああ!」と叫んだ。僕は同様に叫び、ビーカーを置く手を止めた。「これ、そっち(シンク)?」と訊くと彼は「うん」と言って、ビーカーを受け取り洗い始めた。僕は「水しか入れてないから、洗わなくてもいいと思って」と言った。彼は「うん水はいい。でも、汚いとこ置いちゃったから」と言った。

情けないことに、僕はたちまちパニックになり、トイレに閉じこもった。その後、炒めた餃子を食べる元気もなくなり、何も食わずに寝室の扉を閉めて、イヤホンをつけて寝た。

パートナーが大きい声を出したときに、祖母との生活や居酒屋バイトをしていたときのトラウマが蘇ったのだ。「牛乳パックそこに立てかけたら他の皿に水滴つくでしょ」「そのグラス食洗かけんな」などと叱られたときの、自分の行為が相手のポリシーに抵触してしまったことに気づき、脳が萎縮する感覚を思い出した。祖母は日によって異なることを言うし、バイトでは従業員によって食洗機にかけていいものとかけてはいけないものの区別が異なっていた。何が正解なのかわからなかった。

パートナーからしたら「水切りかごに入れるのは洗ったものだけ」という法則らしかったが、僕からすれば「水しか入れていない容器は、その限りではない」という条項が紛れていてもおかしくないと思っていた。これがパートナーではなく祖母だったら、ビーカーをシンクに置こうとした時こそ叫んでいた。「水しか入れてないんだから、洗剤と水道代がもったいないじゃない」と叱り、ビーカーを水切りかごに置かせるだろう。

こういうのが、苦手でして。キッチンは、彼の基準が支配する空間に成り果てたように感じ、僕は彼とすれ違うのも恐ろしくなり、追いやられるように寝室に逃げ込むことしかできなかった。人と一緒に生活するのって難しい。

脳が萎縮した状態は、とてもよくわかりやすい。まさに炎症といった感じで脳が血走り膨張し、粗い感情の集積にもみくちゃにされ、結果として疲れ、すぐに眠れるからだ。すぐに眠れた。

その後、3時間後くらいに目覚めた。数十分間は物音を立てる勇気がなく、同じ姿勢のまま空腹に悶えていたが、タイミングを見つけて立ち上がり、リビングにいるパートナーに、さっきのことを話した。ここ数日のすれ違いやコミュニケーションエラー、お互いに謝るべきこと、配慮するべきことなどを確かめあい、今後の生活へむけた意気込みなどを話した。そしてようやく晩御飯を食べた。朝7時だったけど。

以上。ゲーム開発はほんのちょっとだけしました。やってないよりは良い。

14:05。

徹夜になりそうかも? いや、寝たいな。すこしでも。