cytokine

2025 - 04 - 14

ヴァリアス・アーティスト。

コツコツと見ていた『ボージャック・ホースマン』が最終シーズンに入って、いよいよ話が畳まれそうな雰囲気が出てきた。悲しかった。一昨日、僕は自分の意識は喪失の悲しみと距離があるような気がすると考えたけれど、ボージャックがもうすぐ完結してしまうことを察したとき、直感的に悲しいと言いたくなるざわつきを感じた。悲しい。素晴らしいアニメだった。

『LAZARUS ラザロ』の第一話を見た。めっちゃ良い! パルクールアクションとドローンって相性いいな。宙を泳ぐようなカメラワークに説得力が増すし、主人公の手にかかればドローンは「地形」としてのアフォーダンスすら輝かしてしまう。アクションシーンだけ巻き戻して二度視聴した。

家を出た。

本を取りに実家に戻る必要があった。

実家の鍵を失くしたのでインターフォンのボタンを押した。カメラの方を見たら、祖母に「どちら様ですか」と言われた。

祖母は若いときから籐工芸(籐というヤシ科の植物を編む工芸)をしている。うちにはこのように、祖母が自作した入れ物がいっぱいある。「この器は何本の籐で出来てるの?」と訊いたら「見たらわかるでしょ」と言われた。見てもわからなかった。祖母が裏面をひっくり返して、底の中心を指さした。「ここに、基本の4本がクロスしてるでしょ」4本だけで出来ているんだ。すご。

最近街の老人会の人々にこのスキルがばれて、祖母は今度籐工芸教室の先生をやることになったらしい。祖母は「人に籐を教えるなんて40年ぶりよ。私そんな、ちゃんとやってたのは昔のことで、たいそうな腕じゃないのに先生をやるなんて。初回授業、何にしたら良いのかずっと悩んでんのよ。時間も限られてるから、最初は難しいのは作れないのよ。でもこんなしょうもないもの作ってもみんな嬉しくないだろうし……あんまり簡単すぎてもねぇ」と焦っていた。

恥ずかしいところは見せられないと、予習のために自分がかつて使っていた教科書を他の市の図書館から取り寄せてきたらしい。

猫を撫でながら読んだ。猫は久しぶりの僕に出会ってよそよそしい態度をとっていたが、指先を彼の鼻に近づけたり、耳を折ったりして、僕たちだけの触りパターンを再現していたら、思い出したように懐きなおした。よかった。

僕は籐工芸について、祖母はたぶん自分の能力を低く見積りすぎていると思ったので「最初の授業はつまんないくらい簡単なやつを作れば良いと思うよ。おばあちゃんからしたらくだらない品でも他の老人は苦戦するかもだし、自分で完成させられたものならどんな形でも愛着湧くんじゃない」と言ってみた。

祖母と話していたらどんどん身体が重たくなってきて、和室に横たわった。イヤホンをつけて眠ろうとしたけれど、眠れなかった。昨日感じたような吐き気がまた現れはじめた。疲れてるな。

17時半に目覚ましが鳴ったので仕方なく身体を持ち上げて、布団を畳んでシャワーを浴びて、荷物をまとめて実家を出た。このあと、会社の人と打ち合わせがあった。出るとき祖母に「たまには電話かけなさいよ。心配してるんだからね」と言われた。僕はウーとか返事した。あと万博行けと言われた。

近くのガスト。会社の人に「トロヤさんちゃんと食べてますか? 何か食べますか」と訊かれ、「最近吐き気があって、食欲湧かなくて食べれてないです。でも食べなきゃいけないと思うんで、食べます」と言ってパフェを注文した。そのあと唐揚げを注文した。

しかし、本当に食えないな。僕は会社の人と死刑制度について話しながら、箸で唐揚げを一つ掴んだが、いつのまにか皿に戻してしまっていた。口に、持っていけない。会社の人は「お持ち帰り容器ありますから、今無理して食べなくても大丈夫ですからね」と気を遣ってくれた。パフェはなんとか食べた。会社の人は拍手してくれた。

唐揚げは1個だけ食べて、残りはお持ち帰り容器に入れた。情けないな。たんぱく質取ってくださいね、と念を押された。

Death the Guitarのあれこれを喋ったあと雑談した。会社の人も最近はChatGPTとNotionで、面倒ごとをやりくりしているらしい。毎日の献立は全部AIに決めてもらっているのだとか。「最近何か面白いゲームやりましたか?」と訊かれた。僕は記憶を辿ったがスプラトゥーンとリングフィットアドベンチャー以外、本当に何もやっていなかった。会社の人からは『スルタンのゲーム』というのが面白そうというのを教えてもらった。

会話中、何度か瞼が自動的に落ちた。

打ち合わせが終わって、帰宅した。米を炊いた。炊けるまで寝ていようと思った。しかし眠れなかった。炊けてパートナーに呼ばれた。器にご飯をよそったが、身体がびくともせず、一口も食べられなかった。空腹感はあるのに、箸を持って口に入れて噛んで飲み込むプロセスをどうしても受け入れられなかった。

何も食べず寝ることにした。

たぶん3日連続で出かけたから、順当に疲れたのだと思う。あまり深く考えず、身体を休めて、また食べられるようになるまで時をやり過ごすことを目指した。明日も明後日も出かける用事がある。ウー。やり過ごす。

もう横になってしまったが、寝る前にトイレに行くのと、薬を飲むのをやらないと。チクショー、立ち上がれない。アークッ、アッ、、僕は立ち上がった。振り向いたらパソコンの隣にナッツの小袋が置いてあった。数日前に自分で仕掛けたやつだ。僕はそれを開けてナッツを食べた。何も食べないよりずっといいな。

用を足して薬を飲んで寝た。