警察に捕まるのをやめましょう

2025 - 05 - 14

7時の目覚ましで起きてヤダー。

家を出た。大学に行った。荷物は前日にまとめていた。スタタタと動いた。

卒業制作の審査会(こういう作品を作りますと発表して、教授たちからコメントをもらう)に向けた、ラボ内での事前進捗報告だった。僕は昨日まとめた書類を見せてざっと説明しただけで終わった。Godot Engineでゲームを作っている海外のクリエイターが、今交換留学でうちの大学に来ているらしいということを先生が教えてくれた。その方が作ってるゲームを調べたら、去年のTGSで見かけたことのあるやつだった。ブースが近かった。面白そうだったので記憶に残っている。

ラボ生に一人、卒業制作はせず代わりに論文を書くつもり、という人がいた。彼の資料を見ると、参考文献のところに永井均『倫理とは何か』があった。僕がちょうど今読んでるやつだ。

授業後、先生に質問をした。「あの自分、明確にプロダクトの形に落とし込んで提出するというよりも、自分のありさまをドバドバと出していくみたいな創作のありかたが向いているような気がしていて。そういう点で、エンジニアのオープンソース倫理や、ハッカー倫理みたいなものに通じるものを感じているんです。橋本麦さんとかそれこそ憧れがあって。なんでしょうこう、なんかそういうのないですか……」みたいな、漠然とした内容。「なんかそういうのないですか……」って本当に言った。

そうしたら、Eric Steven Raymond著『伽藍とバザール』(山形浩生訳)を教えてもらった。その筋では必読書らしい。

あとHakim Bey著『T.A.Z.:一時的自律ゾーン』という本を勧めてもらった。どういう文脈でおすすめなのか忘れてしまった。文学とオープンソース倫理の交差みたいなやつってありますかと尋ねたときだったか? あと円城塔がGitHubでバージョン管理している小説を教えてくれた。なんか、興味あるようなないようなという感じだった。

僕は先生に参考文献ありがとうございますといい、会話の流れで「なんか、オープンソース倫理みたいな美的信念と、自分がゲームを作っていることと、自分が日記を書きながら生活をしていることを、うまいこと噛み合わせられたら面白いことになると思うんです……」と口走った。愚痴っぽくなってしまった。先生は「別に噛み合わないままでもいいんじゃない」と言った。

Cosense(元Scrapbox)というツールに興味が湧いた。iOSのメモ帳とかEvernoteとかWorkflowyとかNotionとかZettelkastenとかObsidianとか、そういうメモ?情報管理?ナレッジ管理?アウトライナー?等のサービスには、それぞれの開発理念があり、哲学がある。その中でCosenseの哲学は、先鋭化していていいなと思った。ディレクトリ構造がない、コメント機能がない、共有機能がないなど。

ADHDに最適化した私生活のデザインばかり考えていたからか、最近の僕は思考がいかに道具によって限定されてしまうのか、逆に言えば、道具の設計によっていかに思考の価値を引き出せるかという問いに興味があるのだと思う。Cosenseに惹かれたのは、そのUX的な問いをまさに技術的な・美的・倫理的な領域まで純化させて活動してらっしゃる橋本麦さんがこれを使っていたからだ。しかしその彼はいま、Cosenseからも脱却して自分用によりピュアなツールを自作中みたいなので、既存のサービスの選択肢のなかであれこれ悩んでいる僕は、何段階も遅れている感。

憧れる気持ちはあるんだけれど、氏の制作物やその過程の思考などをdigっていくと、すこし(かなり)落ち込んだ。彼に比べると、自分のやっていることはずいぶんとっ散らかっている。僕は彼ほど自分の興味をピュアに突き詰められないな……自分はなんてだめ……となったのだ。

でも思い直した。実際のところ、突き詰められないのではなく、自分の興味はもうちょっとずれた領域にあるというだけだ。「憧れ」の気持ちはむやみに強めてしまうと、まるで憧れの人が自分の思考や活動のぴったり延長線上にいるように思い込み、嫉妬とか劣等感をおぼえてしまう。昔はSNSを見てそんな気持ちばっか膨らましていた。

憧れるのをやめましょう。憧れる暇があったら、自己分析をしたほうがいい。「噛み合わないままでもいいんじゃない」だ。思想的な潔癖さで動けなくなるよりは、つまみ食いみたいにあれこれ試すべきだ。僕は。何よりも手を動かそう。

欲を言えば、もっと体力が欲しい。

https://scrapbox.io/marukikun/

とりあえずCosenseのプロジェクトは作った。

学校の図書館で『伽藍とバザール』借りた(オープンソース倫理を説くテクストを書籍で読むことに対して頭の中の[何]警察が騒いだけれど、殺した)。TAZも取り寄せた。こちらのほうが気になる。

帰宅して寝込んだ。

その後ジョナサンで、会社の人と打ち合わせをした。近い席にぶつぶつと独り言を言っているおじさんがいた。「238」という数字にこだわっていた。おじさんが我々のテーブルの前を通るとき、僕のことを見て「[体の細さに対するdisのような発言]」と大きな声で言ったので、ちょっとびびった。ハンバーグ美味しかった。

再度帰宅して寝込んだ。パートナーにえ〜ん的なふるまいをした。強くならねば。早起きしたせいでしっかり体調が悪い。

エリック寝ティ