ヒントはずっと出ている

2025 - 05 - 25

疲れてしまった。

もぞもぞしていたら終わった。

永井均『翔太と猫のインサイトの夏休み』を読み終わった。『ソフィーの世界』と意図的に似た構造の話を作っていた。

永井均の本はまだ3冊しか読んでいないけれど、好きになってしまった。氏はなんというか、強すぎると感じる。ファンにならざるを得ないカリスマがある。踏み込んだ哲学議論を断定口調でざくざく書いていく。彼の書くことは、彼のなかでもうよっぽど検討され尽くしているんだろうなっていう凄みがある。真の哲学徒(?)だったら、永井節のその強度にも挑戦したくなるのだろうけれど、僕くらいの(人生の必要のためにその都度哲学書を読むくらいで、哲学そのものを究めようという意気はない)読者は、とても自分が考える程度のことじゃ敵う気がしなくて「もう永井さんの言ってることでいいや」と安心してしまうのだ。

個人的に、文学界における村上春樹に近い存在感を放っている気がする。どちらもスタイルがあって、自信に満ちていて、こんなに読みやすいのに、内容が素晴らしくてちゃんと強度のあるところまで連れていってくれるので、読者としては「自分はもうここでいいや」と委ねたくなる。一度好きになると、そこから抜け出すのが難しい。いわゆる信者になりやすい、カリスマ作家だと思う。

僕もいつか、村上春樹や永井均を卒業(?)する日がくるのかな。

テレビで相撲を見ながら「両国国技館の、土俵の屋根って浮いてるよね」ってパートナーに言ったら「もともとは柱があって、地面から建っていたんだよ」そうなんだ。

パートナーが「どうして今は柱が無いのでしょう」と問題を出してきた。

「一本ずつ減らしていった?」「違う」「あ、燃えた?」「違う」「えーー、えーーーー、マッカーサーが、言ったから」「違う。正解は」「ヤダ、えーーーーえーーーーー天皇が? 天皇が言ったから」「違う」「両国、両国って地下空間。地下関係ある?」「ない」「えーーーー、えーーーーーなんだ、えーーーー」「正解は」「ヤダ、えーーーあ、他の相撲以外のライブとかにも使うみたいな?」「違う、正解は」「イヤ、座布団? 座布団を投げる」「違う」

食い下がっていたら、パートナーが「ヒントは実はずっと出ているよ」と言った。ア!! ア! ア! ア! アわかった!

「テレビ放送が始まって、カメラから邪魔になったから」「正解!」

なるほど! 僕が屋根の浮いている土俵の景色しか知らないのは、テレビ放送の必要のために撤去されたから、ある種必然だったんだな。

それにしてもパートナーの「ヒントは実はずっと出ているよ」というヒント、ヒントとしてものすごく美しい。自分がいま、テレビというメディアを通して相撲の取組を観ていること自体への気づきをうながす。このクイズを正解できたこと以上に、このヒント文を聞けたことが嬉しかった。

もぞもぞしてたら終わったのさ。