孤独の群れ

2025 - 06 - 20

起きて散歩に行こうと家を出たところ、そういえば僕の自転車がある! と気づいて自転車に乗ってみた。いつもの散歩道を自転車で回ってみた。とても楽しい! おもしろ! 自転車、おもしろ! いつもは遠回りになるこっちの迂回路選んじゃってみたりして! おもしろすぎ! いつもより少し高い目線で、システマチックに脚を回して、みなさん私は行動をしていますという自覚に身が引き締まって、恍惚。ビルのガラス戸に映る自転車に乗る自分の姿を見て、うっとり。シティサイクルの若者。あ、オイお前ヘルメットかぶってない。家を出たときには漕ぐつもりなかったから、ヘルメットのこと忘れてた。次から忘れないようにする。

帰って作業する気があったのに、一瞬の気の緩みで田中慎弥の『孤独に生きよ』を読んだ。『共喰い』で芥川賞を獲った田中慎弥はインターネットを年に二度ほどしか使わず、原稿用紙に手書きで執筆している。そんな彼の半分自伝、半分自己啓発書だった。彼は大学受験に失敗したあと10年間引きこもりをしたのち、その後作家になった。学歴も無ければ何か題材になるような当事者でもない、家族関係は決して良くはなかったが、引きこもりをさせてくれるくらいには寛容な母親がいて恵まれていないとも言えない、私はそのような凡人です、ここに書いているのはそのような一凡人の意見ですが……みたいなスタンスで書かれていた。

中身はものすごい薄かった(薄いといって良いと思う)けれど、まあ薄くていいかみたいな書物だった。

文学作品とはピンポイントでなにかを示すのではない代わりに、世の中の広範な領域に神経をめぐらせています。

『孤独に生きよ 逃げるが勝ちの思考』p.57

文学の効用について、こんなふうに書かれていたのが印象に残った。

小説を読み始めるときって、自分はまだこれから「何か」を読むことしかわかっていない。もちろん事前に周辺情報からある程度嗅ぎ分けてその本を選びとっていることは多いけれど、それを読むことで自分が何を得る/得ないかは、読むまでは決してわからない。読み終わっても依然わからなかったこともたくさんある。ただ、本読むことで、何かしら世界の断片に触れたな、という実感が残る。時間をかけて何か読んだな、と思う。その感じを味わうためだけに図書館とか行けてしまうからすごいですよね。

『アドレセンス』2話見た。面白い。今回は学校にフォーカスしていた。僕はアメリカのティーンの学校を描いた映画が好きだから、うれしかった。治安でいうと結構最悪で『天使にラブソングを2』みたいに学級崩壊していた。学級崩壊も好きなのでうれしかった。僕はなんで好きなんだろう。アメリカはスクールカーストが特に激しくて、あいつはださいとかこのグループはいかしてるとか、シビアな構造がある。もちろん実際そこに身を置いたら地獄なんだろうけれど、映画で見ていると、ジョックもナードも、みんな一生懸命無理をしながら生きているようで、愛おしく感じる。『キャリー』とか『エレファント』とか『ヘレディタリー』とか『レディバード』とか。

『アドレセンス』はマノスフィアというアメリカの社会概念を題材にした作品として新奇性があったらしい。全然知らなかった。マノスフィアで検索するとこのドラマの情報ばかり出てくるので調べづらかった。

男性蔑視用語としてアメリカ社会ではインセル(Involuntary Celibate=不本意に禁欲的な人)というスラングがあるらしく(日本でいう「弱者男性」とか「チー牛」みたいな?)、そのように揶揄される彼らが、その標語をむしろ自嘲的なアイデンティティとして内面化したホモソーシャルな連帯を作っていて、ミソジニーとか反フェミニズム的な思想を振りかざしているそうだ。

そんなマノスフィアが今テーマとして批評的に熱いのは、トランプ政権の支持層にマノスフィアが多いからだって。

へえ。

姉と通話しながら4時間ほど作業した。姉とは性癖の話とかした。

現状把握から逃げないメンタルセットが出来たので、以前はトラウマだったスプレッドシートでのタスク管理に再挑戦してみた。どうなるのか。

明日からパソコン。

今日は脱線しまくったのに作業ができて良かった。明日は脱線したくない。