
16時に起きた。どんなヘビも泳げる。
自転車に乗って自転車屋に行って新しいライトを買った。レジ対応をしてくれたスタッフの胸元の名札に見慣れない名字が刻まれているのが見えて、メモした。
その後、選挙に行く必要があったので、投票用紙を取りに実家に行った。祖母と一緒に投票所に出かけた。

投票所の近くにうさぎが飼われている小屋があった。
実家で祖母が夕飯を作ってくれたので食べようとしたが吐き気がしたので「食欲が出たら食べるからちょっと待って」と言ってサイモン・シンのフェルマーの最終定理を読んだ。
祖母はずっと話しかけてきた。

こちらを見て話す祖母の横で、猫がビジネスパーソンみたいな顔、”改まった顔”みたいな顔で、同じくこちらを見ていた。その猫が可愛くて僕は「おばあちゃんの秘書みたいだね」と言った。

「[猫]ちゃんが私の秘書なんてねぇ。面倒見てるのはどっち側かしら? 昼間はどこにいるんだかわからないし、ご飯欲しがってニャアニャア鳴くし、夜中は2時間おきに私のこと起こすし。床にあったこの子が吐いたモノを気づかず踏んづけちゃったことも数知れずよ」

「いやはや」

「でも[猫]ちゃんがいるおかげで毎日話し相手に困らないしね。セラピードッグじゃなくて、セラピーキャットね。持ちつ持たれつかしらねえ」

「恐縮です」

「エ? 私の見てないところで強盗追い払ってくれてるって? [猫]ちゃんが? アンタバック、この子にそんな、アハハ。[猫]ちゃん、そうなの? 私の寝てる間に、守ってくれてんの? 本当はいい子だったのかしら?」

「いい子だなんて。もったいないお言葉」

「アンタそれはそうと、自転車ってほんと危ないんだから気をつけなさいよ。こんな時間に自転車で来るなんて思わなかったじゃない。黄昏時が一番危ないんだから。歩行者の後ろから追い越すときとか、ベル鳴らしちゃあかんのやからね、代わりにペダルを踏んで『カッ、カッ』って鳴らして気づいてもらうのよ。私昔からずっとそうしてたわ。そしたら大抵の人は気づいてくれるのよ。知ってる? アンタほんま心配やわ。エ。ちゃんとヘルメットかぶってるって? 当たり前でしょ自慢げに言うんじゃないわよ。帰り道はライトつけるのよ」

「夜間のライト点灯は、自分の存在を他の通行者に示すという意味でも重要ですからね」

「ご飯ちゃんと食べてるの? ……日中へとへとで? アンタそうよ、そりゃ貧血よ。あ? 私の血を受け継いだ? 一緒にしないでよ。私の貧血はね、生理ってやつで、女の人の、わかる? そう、血がたくさん出たのよ。トロヤのはただの栄養不足よ。ハイハイ。鉄分もビタミンもいいけどたんぱく質が一番大事なんだからね。てかアンタ、ご飯いい加減食べてくれない? せっかく作りたてで温かい状態で出したのに」

「食欲の落ち込みがちな夏こそ、栄養補給が欠かせません」

「あと何度も言ってるけど髭生やすのやめなさい。みっともない。え、[親友]くん? あぁ知ってるわよ。名前だけはね。彼が何? 何、彼脱毛してるの? 髭を? アハハ愚かな。将来髭が必要になったとき困るじゃない。そうよ。そんな時代が来るわよ。エ、アンタもやりたいの? 髭脱毛? あほらしい、やめときなさい。お金もかかるんでしょ。アンタ現在進行形で貧乏なんだから」

「毛並みのメンテナンスにはどうしても時間を取られますよね」

「最近パズルが解けなくなっちゃったの」
本を読んだり祖母と話したりしながら、なんとかご飯を食べた。僕は美味しかった作ってくれてありがとうと言った。そのあともしばらくだらだらしちゃったけれど、21時頃に帰ろうと決めて立ち上がった。祖母は土産に、みかんと大山おこわのおにぎりと野菜ジュースを持たせてくれた。うれしい! 祖母が僕の自転車を見たがったので、外まで見送りをしてくれた。「また来てね」と言われた。僕は手を振って、ライトを点けて帰った。
シャワーを浴びて作業した。
ようやくギターのアセットをGodotのほうに移送してきた。色を割り当ててみたり。それ専用のシェーダーを作ったおかげで、簡単に配色を変えて色々試せる。
パスタを食べながらNetflixの『アドレセンス』最終話見た。すばらしかった……! ウワー、ウワ、名作だ……。すごい。すばらしい。見て良かった。ウワー本当に良かったぜ。震えた。アドレセンス。アドレセンスこれはすごい作品……映画史に新たな1ページ。刻んでんじゃないかな……。少なくとも僕が今年見た映画、の覚えてるやつ、の史、のなかでは燦然と頂点に輝いた。少年も家族も、みんなことごとく天才的な演技だったな。
アドレセンスが良すぎた衝撃の余韻で、しばらくぼーっとした。
その後、パートナーとマンション前の道路に出て、お互いの自転車のチェーンに錆防止スプレーを噴きつける作業をした。もう朝日が昇っていた。静かな朝だった。
今日ゲーム開発 1時間シカ ヤテナイ
ウーもたついてるなぁ。出かけの用事を済ませたあと、そこから寝るまではいつも通りのことをやるっていうふうに、気持ちを切り替える癖をつけないとだ。
明日も用事がある。歯医者だ。歯茎掘るやつだ! 嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌だ! 怖い! もう! 誰に投票すればよかったかな!? 僕が出馬するなら、公約として誰も歯を抜かなくて済むミライの実現を掲げるけどね。前歯ファーストの党。清き一票。あと、夏のセミを廃止します。
明日はもっと作業する。寝る。現実から目を逸らさないこと。よりいっそう。
アドレセンス素晴らしかったなあ。