起きてリビングに出たらパートナーが「見て」と天井を指差した。見上げたら、ガガンボがいた。おお。彼は「風呂場にももう一匹いた。そっちは殺した」と言った。僕と同じポリシー? 彼は仕事に出かけた。もしかして、茶碗を割ったのって、もう一週間前の話? そんな、時間が。
また「申し込み衝動」に駆られて時間を忘れた。
今日はWAIS-IVという心理検査を受けようとして、クリニックや検査施設のサイトを調べたり、電話をかけたりしていた。でも、当分枠が埋まっていたり、受検するにはかかりつけ医からの紹介状が必須だったり、空いてると思ったら大阪の診療所だったりで、結局予約は取りつけずに済んだ。おまえがやるべきことはゲームを作ることで、予約枠の空いたクリニックを探すことじゃないだろ。
17時53分。4時間くらい同じ姿勢でそんなことをしてた。どうしてこうなったのか思い出した。起きたあと、最近よくある動悸や緊張状態、貧血、どっとした疲れにまた襲われた。ふと、これってすべてコンサータの副作用の典型例だなと気づいた。だとしたら今の分量は自分には合っていないということになるなと思い、僕は「飲む量を減らしてもいいか」と相談するため、かかりつけの病院に電話をかけたんだ。すると、今日は休診日だったらしく、電話は応答がなかった。
そのあとなんか、自分のなかで生殺しにされた「医療関係者と話がしたい」というへんな衝動が肥大化してしまい、そのことで頭のなかがいっぱいになった。僕は、何科でもいいから即日行けるクリニックを探しはじめた。それで、医者にかかる口実としてまず血液検査(ヘモグロビン値に自信)を思いつき、やがてWAIS-IV(ワーキングメモリのスコアに自信)に思い当たったんだ。
WAIS-IVは、知的性能を四項目に分けて計測することのできるポピュラーな検査だ。IQの高い者がメンサへの入会資格を得る目的で受けることもあるけれど、発達障害の診断の補助的な目的(グレーゾーンの人の自己分析とか)にもよく利用される。発達障害者とは現代で「知性」とみなされるスペックのうち、一部の機能だけが弱いことで社会生活に困難を抱える人々のことを指すので、WAIS-IVを受ければ凹凸の激しい成績表が手に入ることが多いらしい。
自分はすでに診断を受けている身だから今さら計測したところで意味はないのだけれど、自分なら特異なスコアを叩き出せる見込みのあるテストの存在を考えると、どうしても挑みたくなった。レーダーチャートなんてここのところ、カラオケの分析採点くらいでしか見かけない。僕は何を歌ったところで凡庸な五角形しか出せない。もっと俺にふさわしい検査があるはず。
何の話してる。それどころじゃないだろ。
「医療関係者と話したい」でいえば、そういえば明日、心理カウンセリングを受ける日だった。僕はもうあまりカウンセラーの助けを要するような状況ではなく、話すこともなくなってきたし、次回のセッションで最後にさせてもらおうと思っていた。そうしたら先日、担当の心理カウンセラーの方から次回セッションについて連絡があって、「心理士専門職による事例検討グループからカウンセリング方針の助言を得るため、トロヤさんとのやりとりを録音させてほしい」と依頼された。スーパービジョンと言い、臨床心理士がカウンセリング記録を持ち帰り、師事する別の心理士や団体に提出して臨床指導を受けることがしばしばあるらしい。へー。先方も僕とのやりとりにマンネリを感じていたのかな。
何の話してる
その後動こうとしたけれど、鬱っぽく、ギシギシして何もできず終わった。ぬ〜べ〜見ながら桃を食べることしかできなった。