起きたら24時を超えていた。つまり今日は、無し。
夢のなかで、実家のリビングにいた。ペットの中に毒蛇が混じっていて、今それが床のどこかを這っているのに、祖母が平然と突っ立っているので、ソファの上で僕は悲鳴をあげ「そこ立ったら危ない!」と叫んだ。しかし祖母は「気にしすぎよ」と笑って、取り合ってくれなかった。やがて祖母の背後の部屋の隅にドサッと蛇が現れた。祖母は気づいていない。僕は指をさして「蛇蛇蛇蛇蛇蛇蛇!」と必死に指摘したが、祖母はアハハハハハハと笑ってクイックルワイパーで床の掃除を続けた。
そんな悪夢を見てさっき起きた。本当に恐ろしいと自分が感じているものに、周りの人が理解を示してくれないのって怖いな。
自分には怖く感じられないものを誰かが強く恐れているとき、その人の感情や反応をないがしろにしないようにしようと思った。パートナーはジャンプスケアが苦手で、映画のそれっぽいシーンになると耳を塞ぐ。Outer WildsのDLCを僕がやっているのを横で見ていたときも、ジャンプスケアの予感を察知して、耳を塞いでいた。富士急ハイランドのお化け屋敷では、彼は最初から最後まで全方位を警戒して「ウー怖い、アー怖い」と硬くなって、なかなか動かなくなっていた。
僕は今までそのことを軽く見過ぎていたかもしれない。彼が仕事している横でOuter Wilds DLCを遊んだりしてたのって、ものすごい迷惑行為だったかも。
逆の立場になって考えてみると、そんな気がしてくる。僕は毒が苦手で、蜂に出くわしたりすると、絶対に刺されたくなくて、パニック気味に暴れるときがある。僕がパソコン作業している横で彼が猛毒ガエルを指に乗せて遊んでたりしてたら、気が散らないわけがない。
あと僕は、崖のような、安全設計がなされてない高所もすごく怖い。父と富士山に登ったときを思い出す。富士山頂の中でも一番標高の高い地点というのがあって、みんなそこに立って記念撮影をする。しかしそこは火口に向けて飛び出した結構な崖で、脚を滑らしたら落ちて死ぬ。僕は恐ろしくてたまらず、這いつくばりながらそこまで行った。しかし父は特に怖くなかったようで、ウキウキの二足歩行で頂点まで脚を運んだ。まじかと思った。僕が「危ないよ。怖い」と言っても、父はへらへらしたままポーズをとるので、気が気じゃなかった。序盤の千尋の「お父さんお母さん、もう帰ろうよ」という気持ち。こんなのも、パソコン作業してる横でやられたら気が散りすぎる。
バイオショックやOuter Wildsを進めるのは、パートナーが別の部屋にいるときや寝ているときにする。このくらい、当たり前の気配りかもしれないな。他人の恐れを想像すること。
親友には低所恐怖症というのがある。ビルの狭間にある地上などで見上げると、自分が空に落ちていくような恐怖感情が押し寄せるらしい。自分にはない恐怖ほど、気にしてみたい。
また、親友は色弱があって、焼肉が焼けているのか焼けていないのか、目で判別できない。だから焼肉の席では他人に焼いてもらっているらしい。あと左右盲もあり、どちらが右でどちらが左かがしょっちゅうわからなくなっている。あと今はどうか知らないけれど、鳥の区別がつかないらしい? すずめを見ても鳩を見ても「鳥だ」と言う。彼は他にもさまざまな性質がある。気にしてみたい。
親友は苦手なことや嫌なことをはっきりそうと言うのだけれど、パートナーは自分のことをあんまり話すタイプじゃない。だから彼は、僕が気にできていないところで、あるいは本人も気づかないまま、一人ストレスに耐えている時間があるのかもしれないな。
そんなことを思った。
このことをパートナーに話したら「毒のない蛇は怖くないのか?」と訊かれた。少し考えたすえ、怖くないと答えた。俺、毒のない蛇って、全然怖くないな! うわばみのような丸呑みの大蛇はまた別だけれど、夢に出てきた電源ケーブルくらいのサイズの蛇にもし毒がなかったら、まったく負ける気がしない。チュッと掴んで、ヒョイやわ。爬虫類カフェでそのような蛇を首にかけたことあるしね。
ニシキヘビは毒がなく、おとなしい性格のため、ペットに向いているらしい。毒がなくおとなしければペットにするの極端だな。Wikipediaを読んでみたら、彼らは獲物に巻きついて絞め殺す。窒息させるのではなく、心臓を止めるんだって。ウワー。最近ヘビのWikipediaを見る機会が多いな。
動物が「おとなしい性格」と評されるのをよく見るけれど、それでいうと人間はおとなしい性格なんだろうか。『三体』で鍵となった、人間の最大唯一の強みというのが「頭の中で考えていることを、他者に伝えないことができる」ことだったし、おそらく種としてはおとなしい寄りなんだろうな。あまり多くの個体を一緒に飼うと資本主義化してドーパミン中毒になったり、核開発などをしだすので、そこは注意したほうがいいかもしれない。