そのままシャワーを浴びて家を出た。今日から大学で卒業制作展。4日間。美大最後のイベント。

通学の道中、久しぶりに朝陽を浴びたからか、言い知れぬ幸福感に襲われた。「襲われた」という印象だった。気持ちがほかほかとして、歩きながら、見える景色の一つ一つや、今まで関わってきた一人一人に対し感謝の念をおぼえていた。知り合いにやたらと近況報告しちゃった。こういうときに車に撥ねられるんだろうなと思った。

大学に着いて、自分のブースのセットアップをおこなった。相変わらずDeath the Guitarが遊べる。僕はブースの裏側に置いた椅子に座っていた。訪れたお客さんがプレイしてくれているところを裏側のモニタで見つつ、iPadで漫画の続きを書いていた(締切がやばい)。
同級生のナくんが立ち寄ってきてくれて、話した。彼は絶望していた。年始にインフルエンザに罹って40℃を超える熱を出してかなりしんどかったらしい。幸いゾルトラークみたいな名前の薬を一錠飲んだら一発で治ったらしいけれど、なぜだがそれ以降、彼は大学院に進むモチベーションが消え失せてしまい、(院試の受験料はもう払ってしまったこの段階になって)何のやる気もなくなってしまったそうだ。
それで「絶望してる。ほんと、人生」と言っていた。「それは慢性的な絶望? 一時的な絶望?」と訊いたら、ナくんは「慢性的な絶望から目を逸らすために院に進もうとしてるけど、それ自体が一時的な絶望として迫っている」と言った。彼は自分がアカデミックな領域で活動していくことに興味が無いことに気づいたらしい。しかし、彼の制作物に多いインスタレーションは、それ単体でなかなか金になるものではない。だから院進せずこのまま学部卒としてアカデミアを離れてしまうと、しばらく金もなく何者でもない期間を過ごすことになる。その期間がいつ終わるか、わからない。親からは「就職せよ」という無言の圧。
志望する院のカリキュラムが、どの程度忙しいか(課題制作や研究に追われることになるか)次第で変わってきそうだと思った。友達が在籍してた藝大の映像専攻とかは、1年目はめちゃくちゃハードスケジュールらしい。あとは、そのスケジュール内で自分個人の制作活動の時間をどれくらい取れるかの体力問題も。体力というは本当に人それぞれで、かつどうしようもなく大きな問題だ。「ナくんは体力あるほう?」と訊いたら、「ないね。ほんとに」と言われた。僕も体力が著しくないタイプの人間なので親近感をおぼえた。
彼がやりたい制作のフィールドと、大学院という場所が志向するそれとの微妙なミスマッチも、ナくんを悩ませているみたいだった。たとえば、藝大に新設されたゲームコースの作品は、各学生がそれぞれ研ぎ澄ませたスタイルや問題意識を最大限に活かせるメディアとして、ゲームという芸術形式を選んで利用したような作品が多かった。それゆえ、思ったよりもちゃんとゲーム然としたものが多かった(僕が遊びにいったときに受けた印象)。対してナくんの作品は、ゲームというメディアに対する批評的なテーマを、既存の/オリジナルのゲームやその筐体を用いたインスタレーションで投げかけていくようなものだ。「〇〇についてのゲーム」を作るのか、「ゲームについての〇〇」を作るのか、みたいな違いだろうか。もちろん前者として突き詰めたものが結果として後者の性質を帯びたり、その逆もあると思うけど。
そんなことを話しました。病み上がりで辛そうだった。
同じく同級生のオさんも立ち寄ってくれた。オさんも見るからに疲れた顔をしていた。「トロヤくんうつ病治るのにどれくらいかかった?」と訊かれた。僕は「明確にこの期間うつ病で、いつ寛解したというような区切り目はないから難しいけど、2023年下半期から2024年の間は辛かった記憶がある。今はわりと安定してきている自覚があるから、それを治ったとみなせば、大体1年半とか?」と言った。オさんはシューンみたいな顔をした。
重度うつ状態の診断を受けたオさんは、最近作品制作ができなくなった。そのことを気に病んでいた。直近で自殺未遂を二度したらしい。家のベランダから飛び降りようとした。しかし身体を持ち上げる力がなくてできなかったのだとか。オさんは「明日作品のセットアップ友達に任せてるけど、私も大学来たほうがいいかな?」と言った。僕は何を言うと思った。「いや、自殺未遂をするような状態だったら絶対来ないほうがいい。家で休むべき」と言った。僕は、とにかくオさんは今はしっかり体を休めるべき時期であることと、休養のために何もしない期間を過ごすことに対して罪悪感をおぼえる必要は一切ないことを念押しした。
オさんは、元気なときは漫画を描いたり、曲を作ったり、小説を書いたり、アニメーションや短編映画を作ったりと、エネルギッシュになんでもできる人だった。だからこそ今こうして何もできない自分を責めてしまう回路が根深く精神的にも辛いのだと思うけれど。とにかくゆっくりしてほしい。それが一番早い。人生には時としてどうしようもなく落ち込む時期があるということ、時間によって修復されることがあるということを知って、自分に優しくする習慣を身につければ、寛解したときには以前よりもさらにアップデートしたオさんになっていると思う。自分がそうだったからそう思う。
みんな悩んでいるな。それぞれの質で。

図録のために各学生の顔面の写真撮影が行われた。僕も撮られた。
平日だったけれど、わりと人が来た。わりとDeath the Guitarも手に取ってもらえて、わりと楽しんでもらえた。顔見知りの院の先輩や、マーベラス周りで縁のある方など他のゲーム開発者も来てくれて、それぞれに「日記たまに読んでるよ」と言われた。ドキ‼️

昼ごはん持ってくるのを忘れたので、大学のセブンイレブンでぶぶかのカップ油そばを食べた。絵に描いたみてーなナルト。初めて大学で給湯ポットを利用した。セブンの隣の休憩所で、他の学科の4年生たちが互いの就職先について会話を膨らませているのを聴きながら、ぶぶかを食べた。一人は京都勤務になるから会えなくなるね〜みたいなことを言っていた。
休憩所にはATMがあった。大学にATMがあることを初めて知った。もうすぐ卒業する身だけれど、まだこの大学には知らないことがありそうだった。ATMの隣には証明写真機があって(これの存在も今日初めて知った)、3人組がそのなかに身体をぎゅうぎゅう押し込んで、集合写真を撮ろうとしていた。卒業記念か何かか。
その後も引き続き、自ブースで客のプレイをたまに見ながら漫画を描いておった。
今自分が同人誌用の漫画を描いていることをナくんに話したら、「俺もずっと同人誌作りたいと思ってんだよね」と言われた。「それはいいね、僕も協力したいっすわ。どういう系?」と訊いたら、『週刊わたしのおにいちゃん』みたいなフィギュア付きブックレットを復活させたいと言われた。週刊わたしのおにいちゃんのことを知らなかったので、教えてもらった(たぶん僕が知らないだけで有名なのだと思う)。苺ましまろのばらスィー等、数名の漫画家、イラストレーター、フィギュア作家などが携わったロリ系の合同誌らしい。へ〜。「ロリは描けないから協力できないかもしれない」と言ったら「幼ければいいよ」と言われた。
帰宅した。
冬クールのアニメが始まった。今期は呪術廻戦があるらしい! 死滅回游編。僕は呪術廻戦アニメが大好きだ。皆さんには申し訳ないが、呪術廻戦アニメも僕のことが好きだと思う。一話を見たけど、すす、すごすぎる。画作りがものすごい。ヒエー。ありがとね。
本当に寝る。疲れた。これからあと3日会期が続くのか。