お家のタトゥー

2024 - 09 - 29

東京ゲームショウ4日目、最終日だ。幕張メッセに到着。今日も、たくさんのお客さんの来訪が予想された。

しかし疲れていた。朝っぱらから、身体がバラバラになりそうだった。まともに応対する自信がなかった。僕はブースを放置して、寝ることにした。僕は今までに、イベント展示をかれこれ10回くらいおこなった気がするが、その中で学んだことは、無理をしないということだ。会期中ずっと在廊を続けるのは、今の僕には無理だった。無理をしてブースに居座るよりは、どんな場所でもいいから一旦逃げて、体勢を整えようと思った。僕はスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタ移動して、寝た。あまり褒められた場所じゃないので書かないけど、寝心地の良いところだった。

起きたら11時半だった。2時間くらい寝ていた。ブースに戻ると、手伝いに姉が来ていた。キレートレモンをくれた。

ゲーム試遊会での開発者は、作品をプレイする客に対し積極的にコミュニケーションを取っていくタイプと、特に話しかけたりはせず静観するタイプに分かれる。Death the Guitarは性質的に後者の方がプレイに集中してもらえて良いので、僕はお客さんに対して自分から話しかけることはしない。では客のプレイ中、開発者が何をしているかというと、プレイの様子を見て反省などをしつつ、今日は姉と一緒にノートにお絵描きしていた。

犬についての絵。

OMORIっぽい落書き。

手の甲に家を描いたら、ものすごくしっくり来た。僕は自分の手に、お家のタトゥーを彫りたくなった。最初はほんの冗談のつもりで「手にお家のタトゥー入れたいかも」と言っていたのだが、考えるうちに、本当に入れたくなってきた。姉が家の近くに人の絵を描き加えたが、僕はそれを消しゴムで消した。僕は気づいた。手にお家のタトゥーを彫りたい!

姉には「(家のタトゥーを入れるのは)一旦明日考え直した方がいいよ」と言われた。それはその通りだと思った。タトゥーというのは、気軽に入れられるものではない。サンフランシスコではみんな好き放題腕や脚を飾っていたけど、日本ではアウトローな印象を持つ人も多いだろう。僕自身、初対面の人の腕にちらっとタトゥーがのぞいたりすると「あ、この人、タトゥーを入れている」と思う。それ以上のことは思わないが、その一瞬はそう思う。タトゥーを入れると、「タトゥーを入れている人」になってしまうのだ。また、あとで消したくなったときに面倒臭いというのもある。考え直すのは大事だ。一時の気の迷いで決めないようにしよう。

彫る位置も、よく考えた方がいい。初めは手の甲の絵の位置が適切だと思ったが、手のひらの母指球などの方がいいかもしれない。母指球に彫れば、何か落ち込んだことがあったときに、指で触ったりすることができる。もっと二の腕など目立ちにくい場所もいいかもしれない? いや、家を二の腕に彫るのはださい。自分で見えないと意味がない。しかし、他人に見られたいわけでもない。他の人からしたら、僕と話していていちいち視界に家のタトゥーが入ってきたらうざいだろうし、「なんで家のタトゥーをここに入れているんですか?」と訊かなきゃいけないような気にさせてしまうかもしれない。それは、双方にとって不都合だ。僕は今の時点でもすでに、新しい人と挨拶するたび「なんでトロヤマイバッテリーズフライドっていう名前なんですか?」と訊かれて辟易しているのだ(訊く人は悪くない)。これ以上複雑な説明事項が増えるのは、耐えられない。

そういう感覚が僕にあるなら、手に彫るのはやめた方がいいだろう。無意識にその部分を隠すようになってしまうかもしれないし、話す相手が一瞬僕の手を見たりして、その目の動きに「あ、この人今、家を見たな」と思ったりする場面を想像すると、嫌だな……。考えれば考えるほど、自分は精神的にタトゥーを入れる器ではないことを思い知らされる。タトゥーは、自意識と対極の存在だ。

いま、熱に浮かされたように「お家のタトゥーを彫りたい」という考えに囚われている自分のことも、怖い。いざ彫ったあと、「なんだこれ」と急に冷静になるかもしれない。

そういうことを考えていた。

『ドロップクラッシュ』というブラウザゲームを作った開発チームの人たちが挨拶しに来てくれた。彼らは中学一年生だった。中一で、チームで分担してこの仕上がりのゲーム開発を? すご。若い才能というやつに痺れた。

蛍の光が奏でられるなか、東京ゲームショウ2024終了のアナウンスが流れた。会場の人々は拍手をした。

もったりした疲労感を両手で抱えながら、姉とココスに行った。ハンバーグを食って、帰路に就いた。京葉線では姉と、片方が英英辞典の意味を読み上げ、もう片方がそれが何の単語の意味かを当てるゲームをした。

Q. an unpleasant sound made by a group of musical notes that do not go together well

A. discord

Q. an arrangement to meet someone at a particular time and place, often secretly

A. rendezvous

帰宅。東京ゲームショウはとても楽しかった。次に僕が何よりも考えるべきことは、明日学校に行くことだった。イベントや旅行などが続き、出席日数がやばい。学校学校学校学校!

おやすみー!