awake depth = awake (depth – 1)
夢から覚めた。引きずるようにベッドから出る。壁に頭を叩きつけると、痛みを感じる。今度こそ現実だ。体温計をくわえる。ソファに身を投げ出す。祖母が二人いる。「どうしたの?」「たぶん熱。ずっと悪夢を見てた。目覚める夢。何回も起きて、ベッドから身を起こすけど、いつの間にかまたベッドにいる。それで、さっきまでのことが夢だったことに気づくの。今度こそ夢じゃないって確認するけど、それも夢なの。絶対にどこかおかしいけど、気づけない。僕は話に夢中になって、体温計が鳴ったかどうかわからなくなってしまった。僕は体温計を取り出した。画面には「35.8588.35.8.355555.88335
夢から覚めた。今のも夢だったのか……。また布団にいる。助けてくれ。
20時だった。13時に一度ご飯を食べに起きて、再び寝て以降「夢から目覚める夢」を繰り返し見ていた。そのせいで、現実感がひじょうに曖昧になっていた。目覚めるたびに頭が重たくて、ベッドから出るのが億劫だった。でも何とか自分に言い聞かして、人生の駒を進めなきゃいけないと思って、這いずり出ていた。すごく頑張って起き上がってたんだよ。でも、それが夢だったことをすぐに思い知らされるのだ。無間地獄だった。無間地獄が、13時から20時まで続いてたんだ。
インセプションとの格闘の末、今度こそようやく本当の目覚めに達したみたいだけど、依然としてベッドから起き上がるのはつらかった。昨日と大して変わらないじゃないか。それどころか、一日を20時から始めなければならないから、昨日より絶望的だ。僕はこの後「朝食後に飲む薬」と「夕食後に飲む薬」のどっちを飲めば良いわけ? 僕は何も決められず、だらだらした。
起きました。薬は前者にした。
深夜の街を歩いた。イヤホンをつけた。
昨日と一昨日の日記を、Siriに読み上げてもらった。他人が書いた文章みたいだった。ウオッ。ってなる。
もし何かの判断にたどり着いたとしたら、僕はこれから彼に対しよりアップデートした相互作用を仕掛けていこうとする。あるいは、意識的に彼を避けて自分を守ろうとする。でもそうしたところで、彼はまた新たなやり口で僕にちょっかいをかけてくるだろう。で、それを受けて僕は、また日記を書いて自分を宥めながら、一晩かけて次の判断を探すのか? その応酬は、本当にやるべきことなのか?
『苦労のない穴にさようなら』
なんかこの人、たいへんそ~。
最近映画見てないな。
僕は前を向くことにした。
頑張るぞ。明日からの一週間は、過酷な試練になりそうだった。一週間後に、池袋のPARCOで新作ゲームを展示する予定だった。物販の計画も立っていた。でも、その新作ゲームのプロジェクトファイルはどこにもなかった。なぜなら、僕はまだ何もしていないからだ。あと一週間で、0からゲームを一つ作って、展示するんだって。グッズも作るんだって。まだ存在していないゲームのグッズを、一週間後に。正確には、土曜日からはもう展示が始まっているので、作業できるのは平日の5日間だけだ。
無理すぎる。しかもその5日のあいだに、別件でインターンの面接とかもある。僕は今にも踊りだしそうになったが、何とかこらえた。踊ったら終わりだ。パソコンに向かうんだ。
パソコン!
OS Windows11Home 64ビット
プロセッサ 12th Gen Intel(R) Core(TM) i7-12700H 2.30 GHz
実装 RAM 32.0 GB (31.7 GB 使用可能)
グラフィックボード NVIDIA GeForce RTX 3060 Laptop GPU
とりあえずUnityを起動する。新しいプロジェクトを作成した。新しいシーンを作成した。
どうするんでしたっけ。
ゲームってどうやって作るんでしたっけ。
ね