歩行者無双
ガードレールに接触し自転車が壊れてしまった人が修理のために、購入した新宿のサイクルショップまで、自転車を押して歩く。僕はそれについていった。事故現場の中目黒から、新宿まで歩いた。幅の広い歩道がずっと続いているので、歩きやすくて幸せな時間だった。自転車は道交法上では軽車両だが、押して歩く場合は歩行者の持ち物扱いになるということはpanpanyaの『二匹目の金魚』で学んだ。
歩きながら、バキ童チャンネルの動画で説明されていたネットミームとしての淫夢語録の解釈について教えてもらった。
曰く、この世には5〜6文字くらいしか喋れないような人がいる。そんな人が「やりますねぇ!」「ありがとナス」「〇〇して、どうぞ」といった共通言語をある種英会話のスキットのように使うことで、社会との接点を作れるのだという。たしかに語録に救われた人は多そうだ。ニコニコ動画でのbiim形式のRTAなどは当たり前のように淫夢語録が飛び交っているが、「動画」が視聴者にとって居心地の良い「場」として機能しているのを感じる。
現実でも、ネットミームでしか話さない人っているよな。
歩き続けて、代々木八幡を通り越したあたりで、耳がおかしくなっちゃった。一部の言葉を発すると、その音が頭の中でこもった爆音となって響き、他人の声や環境音が一切聞こえなくなるのだ。
「あー」とか「かー」とか声を出して調査したところ、「なにぬねの」が顕著に頭に響いた。「まみむめも」も少しこもって聞こえた。やっぱり[m][n]の鼻音が壊れている。耳鼻科系の症状だ。
3ヶ月前に耳鼻科で「耳管狭窄症」と診断されたことがあった。もらった薬を飲んだらすぐに治ったのだけど、それが再発したのかも? 大した症状ではない。新幹線でトンネルを通った時の耳の詰まったような感じがずっと続いてるような状態だ。
ためしに「やりますねぇ!」と言うと
「やりマ゛!!!すネ゛゛゛!!!!!!!」
と頭に響き、うるさかった。
モヤモヤしていたけど、歩いていたらいつの間にか自然に治った。よかった。原因はわからずじまいだった。今日は寝不足で欠伸しまくってたからかも。

草彅剛の中心に、黒い線がある。これを見た瞬間「殺される」と思った。実物の草彅剛もこうだったらどうしよう。
新宿に着いた。壊れた自転車をお店に預けたあと、その人に本をおごってもらった。

モーム『月と六ペンス』と、東浩紀『動物化するポストモダン』。そして弓木奈於1st写真集『天使だったのか』(これは自腹)。
アイドルの写真集を買ったのは初めてだった。以前『東京パソコンクラブ』という乃木坂46の番組にしばらく協力させてもらった時期があった。弓木奈於さんはその出演者の一人だった。アイドル的に、自身の写真集が出るというのはすごく大事なことだ。僕もその売り上げに貢献しようと思った。

歩行者天国ができていたので、中心の白線に沿って歩いた。歩行者天国という言葉を見るたびに天国は言いすぎだろと思う。とはいいつつ、ふだん自動車が跋扈する道路のど真ん中を歩くのに、ある程度の優越感やフィーバー感があった。「歩行者無双」的な気持ちがあった。
自転車の修理を待っている間に寄ったカフェで、眠りこけてしまった。体力が限界を迎えたらしい。ので、そこでお別れして帰った。
小田急線新宿駅はまもなく電車が来る時に「お待たせいたしました」とアナウンスが入るから嬉しい。いつも早く電車に乗りたいぜ〜って思ってるから。
NHKの『世界サブカルチャー史 欲望の系譜 21世紀の地政学 ゲーム編』第2回を見た。スーパーマリオがプレイヤーの身体とゲーム内キャラクターの身体をより深いレベルでリンクさせることに成功した、という話がされていた。Bダッシュは、親指の腹でBボタンを押し続けながら、穴の直前で親指の先でAボタンを押すという動作を促す。たしかに繊細なことをやらせている。ここまで緻密に指先を研ぎ澄ませることで、プレイヤーはより強くマリオと自分の身体のリンクを感じるのだ。
そうか、複雑な操作体系は、ある種プレイヤーの没入度を高める効果をもつのか。一つの指を一つのボタンにただ対応させるのではなく、一つの指で複数のボタンを制御させるみたいなデザインをしても良いのかもしれない。現代だとキーコンフィグをどうするかという話にもなってくるな。「一つの指にどれだけのボタンを押させるか」より「一つのボタンにどれだけ複数の機能を盛り込むか」が重要かも。
『Pizza Tower』のアクションはワリオランドシリーズを参照しているけど、参照元よりも必要なボタンはより多く、アクションのバリエーションもより多彩になっている。それでも、あっという間にどのアクションも手に馴染む。プレイヤーはこれ程度の複雑さならついて来れるのだ。Pizza Towerはそれを無理のないかたちで学習できるようにレベルデザインされているのかな。今度、そのへんを意識して遊んでみよう。
傘をさしている人々に対し、俺は言いたいことがある。だが、今日は書くのがめんどくさいからまたいつか書く。
弓木さんの写真集を見た。思っていたよりページが多くて驚いた。めちゃくちゃ模写をしたくなった。写真集ってさまざまなポーズをとるから、人物の造形を勉強するのにすごくいいな。
くたくたになった。最近は何かと外に出て歩く口実があって助かる。室内にいても、寝たきりになってつらいだけだから。
いつゲーム作るんだ僕は。