お客様は八百万の神様です

2025 - 07 - 18

今日は父の誕生日らしくて「祝いに来なさい。お寿司とるわ」と祖母に言われたので、選挙の用紙を取りついでに実家に向かった。

玄関前で、網戸の向こうに猫。

実家に着くなり、祖母は「今日[父]ちゃん帰ってくるの、早くても19時になるんやって。だから[父]ちゃんの誕生日パーティーはやめよう。私とあんた二人で夜お寿司屋さんに行って食べましょ」と言った。

「だからそれまでにあんた、部屋片づけなさい。衣類と、書類と。コートクリーニング出してないでしょ」「[父]無しで僕たち二人で寿司って、それって何を祝してのことになるの? パーティー無しだったら別に普通のご飯でよくない」「そんなやったら、あんた何のためにうち来たのよ」「[父]を祝うためだけど」

すこし話して、夜になったら二人で近所の普通の飲食店でご飯を食べて、そのままトロヤは帰ることにしようということになった。僕は期日前投票をしたあと、その後眠かったので、父の布団に入って寝た。17時に起こしてもらうことになった。

17時に起こされた。祖母は「私考えたんだけど、お寿司屋でお寿司、あんたとお友達のぶん買って、それ持って帰りなさい。そしたらあんたもお友達も腹膨れるでしょ」と言った。僕は寝る前にパートナーに「今日晩御飯食べて帰るね」とすでに連絡していた。だから中途半端に寿司を持って帰るとややこしくなって彼に迷惑だと思った。自転車だから、運ぶにも厄介だし。祖母に「要らない。じゃあ僕はこのまま出ていくから、晩御飯はこっちで何とかするし無しでいいよ」と言った。

「あっそうなん。スイカと桃あるけど、持って帰る?」「やったーありがとう。じゃあスイカだけ」「べつに私とあんたでお寿司屋さん行ってもいいのよ。そうする? でもあんたまだお腹空かないでしょと思って」「いいよもう。てか17時に起こす約束したのは『17時ならあんたお腹空いてるでしょ』ってお祖母ちゃんが言ったからじゃん」「それはあんたができるだけ暗くない時間に帰ってほしいからよ」「とにかくお祖母ちゃんの、その突然『私考えたんだけどやっぱり』ってやつに僕は合わせきれない。その急旋回」「私だって考えてのことなのよ。スイカ、そのリュック入るやろ。梱包材出しておいたけど。包む?」「リュックはびしょびしょになるかもしれないから。パソコンとか色々入ってるから。手提げかなんかある?」「あそう。でもびしゃびしゃになんかならないわよ」「そうかもだけど、万が一びしゃびしゃになったらやばいって話」「そんな、入れればいいでしょ」と言いながらも祖母は早々と手提げを用意して、スイカを入れてくれた。

以前僕が名前を教えた桜の鉢に、名札が刺さっていた。

雑草的な多肉植物がどんどん種を落とすので、別の鉢に移して増やしているのと楽しそうに教えてもらった。

結局僕は、父の誕生日を祝わずに帰ることになった。「何のためにうちに来たのってあんた。投票するためじゃない!」と言われた。それ疑問に思ったのそっちだろ。

別れ際に猫を見に行った。猫は最初から最後まで(旧)僕の部屋の窓辺にいて、半目で外を見ていた。名前を呼んだら猫は頭を震わせてから僕の方を見た。それから「ああ」みたいな顔をして、頭を元の位置に戻しまた半目で窓を見た。体や頭を撫でた。

猫は無抵抗かつ無反応だった。このおおらかな時間。祖母のような突発性予定変更体(ヘンコノイド)とは一生過ごせない時間だ。なんか「選挙の候補者名簿失くしたから、あんた選挙行くの今回はやめときなさい」とも言われたし。

今日の祖母とのやりとりには、自分が実家を出た理由が詰まっていた気がした。祖母のあの、つねにあせあせして、独自に達した結論でこちらのやることを決めつけてくる感じ。合わないな。神みたい。心が追いつかない。誰かに似てると思ったら、僕だ。祖母は同種なんだなと気づいた。嵐のような思考回路で、気まぐれで、思い込みが激しい。他人の気持ちがわからないくせに、自己肯定感が低いから、当て推量で的外れな遠慮や配慮をする。

スイカありがとうと言って、実家を出てきた。今更パートナーに「やっぱり夕飯要る」と連絡するのは忍びなくて、一人でデニーズに行った。

デニーズどんどん美味しくなりすぎ!

週末のデニーズには、急に止まる子供、領収書を収めるケースをテーブルにカンカン叩き続ける子供、それを褒める父、子供にエアコンの風が当たるか当たらないかを議論し続ける夫婦、「ライスこれセットで頼んだんだけどこれセットになってるかしら」とウェイターに尋ねる老人、「もっと広い席無いの? あるじゃん何でこっち案内してくれなかったの」と怒る老人など、祖母に負けず劣らずの八百万の神々が来店していた。まあ人間、このくらいランダムなほうがいいか。これらを捌くお店の人の気苦労は計り知れないけれど。

家に帰った。母と息子の謎の挙動によって、誕生日パーティーをほかされた父。面白い。一応LINEでおめでとうと送信した。

掲示板ページ更新した。ずっとヘビのペニスだけだったの何とかしたいと思っていたので、希釈できてよかった。気が向いたら何でもいいので投稿してみてね。

父から「ありがとう。またおいで」と返信が来た。